【ズーラシア】ホッキョクグマの赤ちゃんが一般公開!

ついに公開!ホッキョクグマのこども「ライ」

5月14日より、昨年11月18日生まれのホッキョクグマのこども「ライ」が、母親のイっちゃんとともにズーラシアで一般公開されました!名前は遺伝子検査でオスと確認のうえ命名されたものです。

かずぺでぃあ

ホッキョクグマは日本で約30頭しか飼育されておらず、とても希少な動物です。

プレス向け取材に参加

今回はズーラシアさんご協力のもと、一般公開前日に取材をさせていただきました。飼育員さんしか知り得ない貴重なお話を聞くことができましたので、是非ご覧ください。

飼育員さんインタビュー

YouTube

ライ&イっちゃんの様子レポート

イっちゃんは、これまでにも出産・子育てを経験してきました。非常に落ち着いた振る舞いを見せており、ライが少し遠くへ行こうとすると、優しく寄り添い、ときにはその大きな前脚で包み込むように抱きかかえる姿も見られます。特に印象的だったのは、水辺でのひととき。ライが恐る恐るプールの縁に足をかけると、イっちゃんはそっと後ろから見守り、そのまま親子そろって水に入る様子には、思わず息を呑むほどの微笑ましさがありました。

ライはというと、まだ小さな体ながらも驚くほど活発で、展示場内を元気いっぱいに駆け回っています。ときにはプールに飛び込んで泳ぎ、またときには岩場をよじ登るなど、好奇心のままに挑戦する様子が見られます。そんな冒険の合間にも、ライは必ずイっちゃんの元へ戻って体を寄せ、安心したようにひと休み。親子の強い信頼関係と、確かな愛情が感じられる、心温まる光景が広がっていました。

ライくんはお姉ちゃんそっくり!

ズーラシア生まれのライくんを見ていると、多くの来園者が口にするのが「ホウちゃんにそっくり!」という言葉です。現在は天王寺動物園で暮らすお姉ちゃんのホウちゃんは、三角コーンやバケツを頭にかぶって遊ぶ姿で人気を集め、なんとそのユニークな遊び方が公式グッズにもなってしまったほどの“個性派”。

そして、そんなホウちゃんの“同じ遺伝子”をしっかり受け継いでいるのがライくん。展示の中でも、すでにおもちゃを転がしたり、頭に乗せようとしたりする仕草が見られ、早くも「かぶりものキャラ」の片鱗を見せています。これからどんな遊び方を見せてくれるのか、観察する楽しみは尽きません。ホウちゃんファンにとっても、ライくんの成長は見逃せない注目ポイントでしょう。

参考:天王寺動物園ブログ
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野生下のホッキョクグマと国内繁殖の意義

野生のホッキョクグマは海氷減少の影響で推定約2万~2万5千頭。IUCNでは「絶滅危惧種(Vulnerable・絶滅危急種)」に指定されています。ホッキョクグマは北極圏におけるキーストーン種です。彼らがいなくなってしまうとアザラシやセイウチなどが増えすぎてしまい北極圏の生態系のバランスが乱れてしまいます。
そのため、世界中の動物園でホッキョクグマの繁殖による保全が進められています。
日本国内でも今回を含め複数回の繁殖実績があり、種の保存と環境教育に大きく貢献しています。

「キーストーン種」とは、ある生態系における「要石」のような役割を担う種のことを言います。
ホッキョクグマの場合は頂点捕食者として個体数のバランス調整に一役買っています。

繁殖の難しさ

しかし、ホッキョクグマの繁殖は非常に難しく、その成功例は限られています。
その理由として、以下の4つが挙げられます。

  • ホッキョクグマの繁殖期はおよそ3ヵ月しかない
  • 出産後はおよそ半年間巣穴にこもり、飲まず食わずで子供を育てる
  • 2年半近く子育てをするため、次の繁殖まで時間を要する
  • 生まれてきた子供が繁殖できるようになるのは4~6歳である

今回の繁殖はズーラシアでは初めての成功事例」と一言加えれば、その難しさがよりご理解いただけると思います。
これまでもズーラシアではホッキョクグマの繁殖に取り組んできましたが「偽妊娠」や「飼育個体の死亡」「出産に至るも成長する間もなく死亡」などといった経験をしてきました。しかし、「過去の経験=これまでの個体が教えてくれたこと」をもとに「飼育舎の改修工事」や「飼育方法の改善」など『繁殖成功のために必要なことをひとつひとつ積み重ねた』ことで、今回の繁殖成功に至ったのです。

ライの父親「ゴーゴ」

「天王寺動物園で繁殖実績のある相性の良いペアだったこと」だけでなく
「歴代の子たちが教えてくれたこと」が今回の繁殖に繋がったのです。

参考:ズーラシアブログ
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しかし、新たなる課題も

例え繁殖に成功したとしても、日本国内でのホッキョクグマの繁殖には、まだまだいくつかの大きな課題があります。
最も大きな問題のひとつは、限られた血統の中で近親交配を避けなければならないということです。そのため、国内の動物園間で個体の移動が必要となりますが、移動には大きなストレスがかかるほか、移動先での環境適応や、雌雄の相性といった新たな問題も発生します。
たとえ繁殖を目的にペアを組んでも、全ての個体がゴーゴとイッちゃんのようにうまくいくわけではありません。
個体同士の相性が悪ければ思うように進まないこともあります。

ブリーディングローン(Breeding Loan)とは、動物園同士が繁殖を目的として動物を一時的に貸し借りする仕組みのことです。この制度は、

  • 近親交配を防ぐための血統管理
  • 遺伝的多様性の維持
  • 繁殖経験の共有

といった目的で国際的にも広く行われており、絶滅危惧種の保全において重要な役割を担っています。

こうした限界を超えるためには、海外から新たな血統を導入することも選択肢のひとつですが、それにも高いハードルがあります。ホッキョクグマ1頭の導入には約1億円規模の費用がかかるとされ、加えて広大な飼育スペースや冷房設備など、環境面での整備も不可欠です。さらに国際的な輸送や手続きも複雑で、簡単に実現できるものではありません。

ホッキョクグマに限らず、希少動物の繁殖は「一世代だけなら近親交配もやむを得ない」と言われるほど切迫した状況なのです!

「かわいい」のその先へ

このように、私たちがかわいいホッキョクグマの子供を見られるのは動物園の「多くの努力」によるものです。
ホッキョクグマや動物園の人たちのために、私たちにもできることがあります。

マナーを守って観覧を!

本記事を見て「実際に会ってみたい!」と思ったあなた!
まずは「ホッキョクグマの親子の観覧方法」を事前に確認しておきましょう!!

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【5/15更新】ホッキョクグマの親子を公開いたします!! 令和6年11月18日に生まれたホッキョクグマのこどもを、母親の「イッちゃん」と一...

公開初日はみなさん静かに譲り合って観覧されており、とても気持ちの良い観覧となりました。
お互いに迷惑がかからないように、そしてホッキョクグマの親子の時間を邪魔しないように、マナーを守って静かに見守りましょうね。

ホッキョクグマを取り巻く環境問題について知ろう

ホッキョクグマは、地球温暖化の影響を最も早く、そして深刻に受ける動物のひとつと言われています。
先に言及したことは氷山の一角です。海氷が減少すれば、狩りや移動ができなくなり、命をつなぐことすら難しくなってしまいます。
そんなホッキョクグマたちの姿を間近に見ることは、私たちに「いま地球で何が起きているのか」を問いかけてくれるようです。

そんなズーラシアでは、ホッキョクグマを取り巻く環境についての「ポスター展示」があります。
母子公開中の5月現在では、午後になると親子が寝室へ帰り、13:30から父親「ゴーゴ」の自由観覧に切り替わります。その際、これらの展示もゆっくりと見られるようになります。
ホッキョクグマ展示場にお越しの際は、ぜひポスターにも目を向けてみてください。

かずぺでぃあ

動物園の動物たちは環境問題のメッセンジャーでもあるのです。

みんなもライくんに会いに行こう!

今回の取材やホッキョクグマの展示などを通して、私たちはそのかわいい姿に癒されただけでなく、その命の尊さと地球環境における重要性を教えてもらいました。
皆さんもぜひ、この愛らしいホッキョクグマの親子に会いに来てください!

かずぺでぃあ

ライくんの成長を見守ることは、動物園や地球環境の
未来について考えるきっかけになるかもしれませんね。

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この記事を書いた人

かずぺでぃあのアバター かずぺでぃあ 元動物園スタッフ

動物と動物園が大好きすぎて、ゲームで夢の動物園を作ってる人です。
某動物園での臨時職員の経験や、YouTube活動で培った知識を活かして、動物園をより楽しめる情報や、動物をもっと好きになれる話題をお届けします!
ちなみに、推し動物は百獣の王「ライオン」です。