「みんなのアニマルアカデミア vol.1」そもそも“動物福祉”って何?

はじめに

最近、保護犬保護猫や畜産、そして動物園の現場でよく聞かれるワードが「動物福祉」です。動物愛護団体にも良く使われている単語で聞いたことある方も多いのではないでしょうか?
しかし、間違ったイメージで認識している場合も多いです。まずはその間違いを正してみませんか?
そして聞いたことのない方もこれを機に学んでみませんか?

正しい知識を身に着けることが動物を守る上で第一に大切なことです!

動物福祉とは

…これはどういう状態

動物福祉(Animal Welfare)と聞くと多くの人は「動物の暮らしを良くすること!」と答えます

…が、これは間違いなんです!!

国際獣疫事務局(OIE)の定義によると「動物福祉」とは、「動物の生活と死の状況に関連した動物の身体的および心理的状態」とされています。…要するに

動物福祉とは、「動物の心と体の状態」の事なんです!!

使われている場面や使い方によって多くの人がこういう誤解をしてるんじゃないでしょうか…?

‥でも動物の心の状態なんてわかんなくね?

という方、ご安心ください。

動物福祉を評価するために「5つの自由(Five Freedoms)」というものが示されていて、動物が満たされるべき基本的な基準とされています。これに基づき、現代の動物園では、動物をただ見せるだけでなく、その動物にとっての“幸せな暮らし”をつくる努力が求められているのです。

POINT

正しくは「動物福祉を向上する」で「動物の暮らしを良くすること」の意味になります。

「5つの自由」って何?

適切な気温じゃないと命を落とすことも…

5つの自由はイギリスのFAWC(家畜福祉委員会)によって示されたもので、これが満たされていれば動物は良い状態で飼育されているということになるわけです。

具体的には‥↓

1、空腹と渇きからの自由(Freedom from Hunger and Thirst)

動物が常に新鮮な水を飲めていて、懸鼓営るために必要な栄養を取れていること。

例(具体的な評価項目):必要な栄養量に合う量の餌を与えているか?

2、不快からの自由(Freedom from Discomfort)

適切な飼育環境で、気温・湿度・寝床・隠れ家などがあって、快適に過ごせていること。
例:十分な展示場の面積があるか?

3、痛み・損傷・疾病からの自由(Freedom from Pain, Injury or Disease)

病気やけがの予防と治療が行われ、動物が健康でいること。
例:けがや病気はちゃんと治療されているか?

4、恐怖と苦悩からの自由(Freedom from Fear and Distress)

ストレスや恐怖を避ける場所、そのための取り扱いがなされていること。
例:来園者の声や視線から逃げられる場所があるか?

5、正常行動発現の自由(Freedom to Express Normal Behaviour)

その動物らしい自然な行動ができるような環境や刺激があること。
例:異常行動(ストレスによっておこる行動)をしていないか?

できるだけ野生に近い状態で飼育することが大事ってわけですね!

これらの「5つの自由」を実現することは、動物たちの心身の健康と自然な生活を守るうえで不可欠です。近年の動物園では、単なる展示から「生きた教育と福祉の場」へと進化しており、この概念が中心的な指針となっています。

なぜ“動物福祉”を良くしなきゃいけないの?

ストレスがかかると“心”も“体”も弱くなります‥

「動物福祉」と聞くと、過激派動物愛護団体の印象などによってあまり良いイメージを持たない方もいらっしゃるんじゃないかと思います‥
でも実は、動物にとっても人間にとっても、福祉を高めることはとても大切な意味を持っています。

🐾 1.動物も「感じて」「考えて」いるから

近年の研究で、動物も「痛み」「怖さ」「退屈」などを感じ、時には「喜び」や「好奇心」も持つことがわかってきました。
どんな動物にも、私たちと同じように感情があり、記憶し、学習し、ストレスを受けるのです。だからこそ、“ただ生かす”のではなく、“快適に生きる”ことを守る必要があるのです。

🐾 2.福祉が悪いと、健康にも影響が出る

ストレスを受け続けた動物は、免疫が下がり、病気になりやすくなることが分かっています。
福祉を良くすることは、単に「気分の問題」ではなく、長く元気に生きてもらうための基本でもあります。

🐾 3.「見せる」時代から「伝える」時代へ

動物園や水族館では、「見世物小屋」から、「生き方や生態を学ぶ場」へと役割が変わってきました。
その中で、“福祉の整った動物の姿”を見せることは、教育の為にも必要です。

※動物福祉という概念は、実はまだ歴史が浅く、世界的にも1970年代以降に本格的に広まったものです。日本でも、動物園は長らく「見世物」としての役割が強く、芸を見せたり触れ合いを中心にした展示が主流でした。近年ようやく、動物の心理的・行動的な健康に配慮した「福祉型展示」へと移行が進んでいますが、地方の動物園や民間の小規模施設では、人材や予算の制約により「理想は分かっていても実施できない」という現実が今も存在しています。
動物福祉の向上には、制度や支援体制の整備、来園者の理解や協力も欠かせません。

自然そのまんまの展示場(環境が全てでは無いんですがね…)

🐾 4.人間の責任として

動物園や牧場、ペットなど、私たちは動物の「自由」を制限している立場です。そのぶん、その動物の生活をどう守るかは人間にかかっているとも言えます。
「かわいそう」と思うかどうかではなく、私たちが捕まえて管理している以上は、できるだけ良い状態で暮らしてもらう努力が必要なのです。

🐾 5.“共に生きる”未来のために

動物福祉の向上は、単に動物のためだけではありません。動物を通じて、他者への思いやりや、多様な生き物と共存する視点を学ぶことができます。
これは、これからの社会にとっても、とても大切な価値観です。

まとめ

  • 動物福祉は「動物の心と体の状態」を示す言葉
  • その評価の為に「5つの自由」という指標がある
  • 人と動物、双方の為にも動物福祉に配慮する必要がある

 今回はまず、「動物福祉」そのものへの理解を深めていただきました。
5つの自由など、あまり知られていないものもあったかと思います。今回の記事を通じて動物福祉への理解が深まっていればうれしいです!!

Ryusei

次回は、動物福祉において最も間違いやすい
「環境エンリッチメント」について!!

もっと知りたい人へ

参考文献 ↓動物園の福祉についても詳しく書かれていておススメです!!

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この記事を書いた人

Ryusei -動物ガチ勢-のアバター Ryusei -動物ガチ勢- 現役獣医学部生

動物ガチの大学生です! 動物園と一緒に動物福祉の研究しました!2023年埼玉県私学文化祭最優秀賞、2024年日本動物学会高校生ポスター賞受賞、2024年3月千葉市動物公園にて講演会を実施
推し動物はゾウ、ヒョウなど…!