これを読めばごかつら池どうぶつパークに行きたくなる!!文字通り崖っぷち!「トンデモ展示場」

はじめに

ごかつら池どうぶつパークの魅力の一つ、それは他の動物園と比べて特色ある展示場です。
入園口で入園料を払い、カラカルのジナに「シャー!!」と挨拶をされた先で待っているのは人間ではとても登れないような崖と、そこに配置された2つの展示場です。

昨年行われたリニューアル工事の際、芝滑りのコーナーとして使われていたエリアを現在の高橋園長が展示場として改修したことにより、崖を用いた展示「くりふぞーん」が誕生しました。

今回はそのくりふぞーんにスポットライトを当て、そこに住まう動物たちの魅力とともにお伝えしていきます!ぜひ最後までご覧ください!

“トンデモ展示場”で飼育されている動物たち(クビワペッカリー)

単なる豚と思ったら大間違い!!

まず、この種類を知らない方もいらっしゃるのではないかと思います。

クビワペッカリー(学名:Tayassu tajacu)は中南米に生息する草食動物で、ペッカリー科3種の中で最も小型の種類です。

ペッカリー科ってなんやねん!!

とよく動物園で聞きますが、正確にいうと「鯨偶蹄目 猪豚亜目 ペッカリー科(クビワペッカリーはさらにクビワペッカリー属に分類されます。)」になり、イノシシに近い仲間です。

仲良し…尊い

彼らにも知られざる魅力がたくさんあります!

IUCN/SSC Peccary Specialist Group が発行する専門誌「Suiform Soundings」に掲載された論文において、飼育下のクビワペッカリー群において、1頭が死亡した際の同じ群れの他個体がどのような行動をするか詳細に記録したものがあります。
結果は、仲間が死体を繰り返し嗅ぐ、擦り付ける、近くに留まるなどの行動が観察されました。これらは、単なる興味ではなく「群れの仲間の死」に対する特別な反応として、社会的な絆が強い可能性を示唆するとされています。
死者を弔う、仲間の死を惜しむ行動を見せるのはゾウチンパンジークジラなど、知能が高いといわれている種で多く観察されていますが、ペッカリー科に属する動物たちもこの優秀な頭脳を持った生き物に並ぶことになります。

仲間が亡くなった時以外でも、彼らは鳴き声によって仲間と複雑なコミュニケーションをとることがわかっています。英語で犬の鳴き声(吠える)を意味する「Bark」と呼ばれる彼らの鳴き声はさながらドーベルマン!威嚇、警戒、様々な用途で用いられます。さらに子供と母親のコミュニケーションに用いられる高音、さらに背中から臀部にかけてみられる臭腺からでるニオイによって縄張りの主張など様々な手法を用いたコミュニケーションを取っているといいます。

Ryusei

ただのブタと蔑むことなかれ!優秀な頭脳と仲間への思いやりを持った素晴らしい生き物です!!

彼らは中南米の広い地域に生息する凄まじい適応能力も持ち合わせています。
南米のアマゾンから住宅街まで、さらにはアンデス山脈の標高3000m付近でも生息が確認されています。サボテンや灌木まで様々なものを食べられる植生と、幅広い地域の様々な環境で生息できる適応能力が彼らの強みでもあるのです。

“トンデモ展示場”で飼育されている動物たち(ヤギ)

「ヤギを説明して」といわれて、しっかり説明できますか?

 皆さんは、ヤギを知らない人に「ヤギって何?」と聞かれたら…なんと説明するでしょうか…?

2本の角がある…中くらいの…

「メェー!」って鳴く…

古くから人間とともに暮らしている家畜ですので、身近な生き物と思います。「紙を食べちゃう」「ヤギの郵便屋さん」として子供たちにも親しみ深い生き物ですが、なかなか詳しく知らない方が多いのではないかと思います。

 ヤギ(学名:Capra haircuts)は世界中で家畜(産業動物)として飼育されており、現在でも約200種が使役されているといわれています。彼らの歴史は古く、家畜を専門に研究する北里大学獣医学部の先生によれば約1万年ほど前にベゾアールというヤギ類から家畜化されたといわれています。

野生のベゾアール Designed by Freepik

小型かつ群生で扱いやすく人が食べられないような雑草(粗飼料)を効率的に人間の食べられる肉や乳に変換できる生き物として初期の人類にとっては最高の相棒だったのです。

ヤギが「紙を食べる」というのは上記の「人間が食べられないような草を食べる」という点から派生しています。
ヤギが家畜化された西アジアやエジプトなどでは5000年ほど前からパピルスといわれる植物から作られた紙を使用していました。

パピルス

日本においても初期は植物由来の繊維を用いた「和紙」が使われていました。これらの紙は単なる植物繊維としてヤギが“消化可能な餌”となっていたのです。
…ちなみに現在の紙にはインクや表面の塗装物などヤギにとって害となる物質が使われていますので、絶対にヤギに紙を食べさせてはいけません

そんな身近なヤギたちにも知られざる魅力があります。2018年にSpringer Natureに掲載された記事において、ヤギは仲間の感情表現に対して非常に敏感であることが示されました。特にヤギに対してネガティブな声(ストレスボイス)を聞かせたとき、その方向を注視したり心拍数が上昇するという反応を示すことが報告されています。
 これは人間でいう「共感」の初歩段階と考えられていて、反芻動物においてはかなり珍しい例とされています。

ほしいけど…怒られるから取れない…の図

また、彼らは頭脳面においても非常に優れていることが知られています。 

デンマークのコペンハーゲン大学のブリーファー教授はヤギ12頭に対し、簡単なタスクを課し、それに対する問題解決能力と長期記憶を実験しました。その結果、大多数のヤギが簡単な訓練を受けて迅速の問題解決の能力を獲得、さらに最大10か月のインターバルをあけた後にもう一度同じテストをしてみると平均2分以内にタスクを完了しました。そこら辺の現役学生よりもいい記憶力してます。

Ryusei

僕の場合、普通に英単語テストは試験後2分で記憶から消えますw

この実験では群れごとに訓練したのではなく、個体ごとにマンツーマンの個別指導で訓練したもので、実演者を観察した後の方が、観察の機会がなかった場合よりも課題の学習速度が速くなることはなかったとのことなので、ヤギが社会学習ではなく個人学習によって学習したということになります。

これほどの知能と記憶力、状況適応能力によってヤギという生き物は繁栄してきたのかもしれません…

ヤギの展示場はペッカリーの隣にありますが、「くりふぞーん」ではなく「めーべーぞーん」になります。
最初は坂の上のみを展示場とする予定でしたが、園長たっての希望で斜面の全域を展示場にすることになったのです。

Ryusei

園長の動物に対する愛情があふれてますね!!

こんな展示場、他にない!?

斜面で餌を探すペッカリーの群れ

ごかつら池の話に戻りましょう。日本の道路は道路交通法で傾斜が約6.8°程度とされていますが、この展示場ではその2~3倍以上の角度がついた急斜面となっています。普通に人間が歩いてもつらいこの斜面、これが動物たちの運動量向上につながっているのです。

斜面で草をはむヤギ  ほぼア〇プスの少〇

また、これらの展示場は彼らの生息地の環境再現にも役立っています。
山口県のときわ動物園よこはま動物園ズーラシアに代表されるような生息環境展示を多く取り入れた展示になっていて、動物たちの本来の姿を見ることができます。

面積だけ考えると、ヤギでは盛岡市動物公園や各種牧場、ペッカリーでは上野動物園ネオパーク沖縄など、この展示場をに匹敵するような展示場は多くあります。

盛岡市動物公園のヤギ展示場(柵の内側)

しかし、ごかつら池に匹敵する傾斜と環境は現在の日本国内にはほぼ存在しません。

クビワペッカリーに関しては、アンデスに住む個体群の生息環境を再現したものとして貴重な展示になっています。

どちらの展示場も草本類の種をまいて緑地化しようとしているそうですが、両展示場の差によって動物種による展示場への影響の差も見る事が出来ます。
ヤギは草の葉っぱを食べるのに対して、クビワペッカリーは、猪豚類特有の鼻を用いて根ごと掘り返して食べてしまいます。このことによってヤギの展示場には緑が残りペッカリーの展示場にはぬた場や岩場が多い砂地という環境の差ができるのです。

黄昏ヤギ…

この展示場には近年多くの動物園で取り入れられているプラスチック製のフィーダーなどはありません
これは園長先生の「より野生に近い状況で飼育したい!」という希望が大きな理由となっています。
フィーダーなどを入れると、動物の暇時間は確実に減らす事が出来ますが、野生下の状態と比べてフィーダーへの依存性が強い飼育動物特有の行動パターンになります。そのため、ごかつら池どうぶつパークでは土壌に種をまき、餌の配置を工夫するなどでできるだけ自然に近い方法で動物たちのQOL向上に努めているのです!

まとめ

いかがだったでしょうか?

ごかつら池どうぶつパークに住む魅力的な動物たちと、びっくりな展示場、そして彼らの為に取り組む飼育員の皆様と園長先生の熱意!少しでも伝わってもらえたらうれしいです!!

クラファン終了まであと少し、ラストスパートです!皆様のご支援をどうぞよろしくお願いいたします!!

https://readyfor.jp/projects/gokatsurazoo

参考文献
  • Gasparini, M., Desbiez, A. L. J., Keuroghlian, A., Campos-Neto, M. F., & Mangini, P. R. (2008).
    Behavioral observations of collared peccaries (Tayassu tajacu) following the death of a herd member.
    Suiform Soundings, 8(1), 28–32.
  • ごかつら池どうぶつパーク「くりふぞーん」https://gokatsura.jp/animallist/kurifuzone/
  • Baciadonna, L., McElligott, A. G., & Briefer, E. F. Goats distinguish between positive and negative emotion-linked vocalisations. Frontiers in Zoology, 15, 31 (2018).「ヤギの感情認識に関する研究」https://link.springer.com/article/10.1186/s12983-019-0323-z
  • riefer, E. F., Haque, S., Baciadonna, L., & McElligott, A. G. Goats excel at learning and remembering a complex task. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 281(1789), 20140699 (2014).「ヤギの長期記憶と学習能力についての研究」https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24666734/
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この記事を書いた人

Ryusei -動物ガチ勢-のアバター Ryusei -動物ガチ勢- 現役獣医学部生

動物ガチの大学生です! 動物園と一緒に動物福祉の研究しました!2023年埼玉県私学文化祭最優秀賞、2024年日本動物学会高校生ポスター賞受賞、2024年3月千葉市動物公園にて講演会を実施
推し動物はゾウ、ヒョウなど…!