よこはまズーラシア食品ロスへの取り組み

ホテルの“もったいない”食品を動物たちに

動物園・水族館では、地域とのつながりを大切にしながら、さまざまな形で食材の提供を受ける取り組みが行われています。
例えば、農家の方から提供される規格外の農産物や、ご厚意による野菜・果物などが、動物たちの餌として活用されることがあります。

今回取材させていただいたよこはま動物園ズーラシア様では、都市部という立地を活かし、近隣ホテルと連携した食品ロス活用の取り組みが行われています。
ホテルのビュッフェなどで提供されながらも消費されなかったパンや果物を、動物たちのおやつとして活用するという取り組みです。

※下記掲載画像はイメージです。実際にホテルで提供されるビュッフェとは異なります。

※下記掲載画像はイメージです。実際にホテルで提供されるビュッフェとは異なります。

ビュッフェイメージ①
ビュッフェイメージ②

取り組みの背景と仕組み

本取り組みは、市内ホテル・動物園・運搬担当の事業者が連携して実施されています。この連携は、横浜市資源循環推進プラットフォームを通じて関係者がつながり、資源循環を進めるための協力が生まれたことによって実現されています。

ホテルで消費されなかった食品を回収し、事業者が動物園へ輸送、その後おやつとして提供される流れとなっています。

対象となる食品は、パン(食パンやバゲットなど)や果物(ブドウ、オレンジなど)であり、いずれもビュッフェで提供されたもののうち、時間内に消費されなかったものです。

また、本取り組みは来園者へのガイドの中で実施され、食品ロス削減を身近に感じてもらう機会としても位置付けられています。

連携事業者 (敬称略・順不同)

■食品提供:
ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜
ヒルトン横浜
ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル
■運 搬:藤ビルメンテナンス株式会社
■協 力:J&T 環境株式会社


現地での様子と動物たちの反応

現地映像:♂ラスクマル

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担当飼育員さんによると、耳をパタパタさせているのは喜んでいる感情表現だそうです。

現地映像:♀シュリー

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実際に現地で確認したところ、インドゾウのラスクマルとシュリーが提供された食材を口にする様子が見られました。
普段の餌とは異なる食材に対して、様子をうかがいながら食べる行動や、乾草(チモシー)に混ぜたりいつもと違う採食行動が見られました。

ゾウは1日に100kg以上の食事を摂る動物であり、今回提供された量はその中では多いものではありません。
しかし、通常とは異なる食材や体験が与えられることは、行動の変化や刺激につながる取り組みであると感じられました。


課題と運用面での工夫

今回の取材では、飼育担当者との調整や、食品の運搬方法などについても、横浜市と動物園の指定管理者である(公財)横浜市緑の協会の担当者に伺いました。

動物に与える食材については、栄養面や安全面の確認が必要であり、動物種ごとに適切な量や内容を調整する必要があります。
また、ホテル側との連携においては、衛生面への配慮や保存方法の調整も重要なポイントとなっています。

さらに、食品ロスは日によって発生量が異なるため、安定的な供給ではないという特性もあり、その都度対応していく運用が求められています。

以下、ZooPortalと、学生団体『命と自然の学生基地』様から募った質問と、それに対して頂いた回答をまとめています。

質疑応答

飼育担当者との調整において、ご苦労された点を教えてください(栄養面など)

横浜市としては、ホテルと動物園の双方との調整を行っており、特に動物園側とは栄養面や安全面の確認が重要なポイントでした。どの動物にどの食材を与えるかは専門的な判断が必要であり、飼育担当者と複数回の打ち合わせを重ねながら決定しています。また、動物種ごとに必要な量や大きさが異なるため、その調整にも苦労がありました。さらに衛生面への配慮としてホテル側と連携し、果物は冷蔵、パンは冷凍するなど、新鮮な状態で提供できるよう調整しています。加えて、味付けされた食品は避け、自然素材に近いものを選定するよう依頼しています。
(果物は砂糖、シロップやクリームが付着していないもの。パンは菓子パンではなく食パンなど味付けが少ないもの。)

動物たちの反応や評価は、どのように確認されていますか

今回の食品は通常の餌とは異なり「特別なおやつ」として提供しています。普段は栄養バランスを重視した同一メニューが基本ですが、こうした変化を加えることで動物福祉の観点から刺激を与えることを目的としています。実際の反応としては、ゾウが最初は様子を見て、その後ほかの個体の行動を見て食べる様子などが確認されました。評価については明確な数値指標は設けておらず、食品ロス削減の啓発効果や来園者の反応なども含めて総合的に捉えています。

食品ロスが動物に提供されるまでの流れを教えてください

ホテルで発生した食品ロスを回収し、果物は冷蔵、パンなどは冷凍処理を行った上で運搬されます。その後、動物園で解凍し、通常の餌とは別に「おやつ」として提供されています。また、一部は体調不良時の投薬補助や食欲低下時の対応にも活用されています。

食品の運搬方法について教えてください(受け取り方法や輸送手段など)

ホテルからの回収は藤ビルメンテナンス様が担当し、動物園まで運搬していただきました。地域貢献の一環として協力を得ています。おかげ様で現時点では運搬費用は発生していません。

1日に発生する食品ロスの量はどの程度でしょうか

食品ロスは日によって発生量が異なり、一定ではありません。あらかじめ量を確定することはできず、その日に発生した分に応じて対応しています。

受け入れた食品ロスはどの程度消費されていますか(余ることはありませんか)

基本的には使い切る運用となっており、余剰が出た場合でも他の動物に活用されています。動物福祉の観点からも有効に利用できるため、余ることが問題になる状況にはなっていません。

保管スペースについて問題は発生していないのでしょうか

ホテル側では、既存設備の範囲内で工夫して対応していただいています。

本取り組みにおける、動物園側およびホテル側それぞれのメリットを教えてください

提供側であるホテルにとっては、食品ロスの有効活用につながるほか、地域貢献や資源循環、サステナビリティ活動の一環としてご協力いただいています。動物園側にとっては、動物福祉の向上に加え、来園者に対する食品ロス問題の啓発や環境教育の機会創出につながっています。

今後の取り組みについての計画を教えてください

本取り組みは一過性のものではなく、継続的に実施していく方針です。動物園と協議しながら運用方法を検討し、協力するホテルの拡大も視野に入れています。直近では4月・5月の実施日が決定しており、それ以降については引き続き検討中です。


まとめ

今回の取材を通じて、食品ロスという一見ネガティブに捉えられがちなものが、動物たちにとっては新たな刺激となり、価値へと変わる瞬間を目の当たりにしました。

インドゾウのラスクマルとシュリーが、普段とは異なる食材に興味を示しながら食べる姿は、単なる「餌」ではなく、「体験」としての意味を持っているように感じられました。量としては決して多くはないものの、日々の生活に変化をもたらすという点において、その影響は小さくないものだと受け取れます。

そして何より印象的だったのは、この取り組みが多くの関係者の協力と善意によって成り立っている点です。
食品ロスが動物たちのために活用され、それを支える企業や人々が存在しているという事実に、地域のつながりの中で価値が生まれていることを実感しました。

食品ロスの削減、動物福祉の向上、そして環境教育。
これらはそれぞれ別の課題でありながら、本取り組みでは一つの流れの中で結びついています。ホテルにとっては食品ロス削減や地域貢献、動物園にとっては福祉や教育の向上につながり、来園者にとっても身近な問題として捉えるきっかけとなっていました。

この取り組みが、他の動物園・水族館にとってのモデルケースとなり、それぞれの地域に合った形で広がっていってほしいと感じました。地域ごとに異なる課題や資源があるからこそ、その土地に根ざしたかたちで、同様の取り組みが生まれていくことに大きな意味があると考えています。

動物園という場を起点に、人と動物、そして地域社会がゆるやかにつながるこの取り組みが、今後も多くの場所で展開されていくことを願っております。

参考情報

よこはま動物園ズーラシア様では「飼育員のとっておきタイム」として、飼育担当者が展示場前で動物の生態や日々の様子について解説を行うガイドイベントが実施されています。
来園者は飼育員の話を直接聞きながら、動物の行動や特徴をより深く知ることができ、場合によっては食事の様子などもあわせて観察することができます。

また、特別な手続きは不要で、開始時刻に展示場前へ集まることで気軽に参加できる点も特徴です。

現地映像:♂ラスクマル

音声ON↓

今回のガイド「飼育員のとっておきタイム」では、インドゾウについてお話を伺うことができました。

ゾウは鼻を使って一度に約5Lの水をためることができ、飲水時には約30Lを一度に飲み、1日では約200Lもの水を摂取するとのことです。鼻先は筋肉繊維でできており、非常に繊細かつ高機能な器官であると説明がありました。

また、寒さ対策として約42度のお湯が用意されており、ラスクマルは水の場合はすぐに離れてしまうのに対し、お湯の方を好む様子が見られるとのことでした。

こうした解説を通じて、普段は見えにくい動物たちの生態や飼育の工夫を知ることができる点も、本取り組みの一つの特徴です。

次回、食品ロスを活用した餌やりの様子は、執筆時点では以下の日程で実施が予定されています。
2026年4月19日(日)
2026年5月17日(日)
開始時間:午前11時15分(飼育員のとっておきタイム開催時)

おまけ

今回の取り組みにぴったりなゾウとフルーツのキーホルダーが売店にありました。


よこはま動物園ズーラシアについて

入園料:大人800円、中人・高校生300円、小・中学生200円、小学生未満無料
毎週土曜日は高校生以下無料(要学生証等)
よこはま動物園・金沢動物園共通年間パスポート:18歳以上2,000円

開園時間:9:30~16:30(入園は16:00まで)

休園日:毎週火曜日(祝・休日の場合は開園し、翌日休園)※3/18~5/6は無休

交通:相鉄線「鶴ヶ峰」「三ツ境」駅から「よこはま動物園」行きバスで約15分、JR横浜線・横浜市営地下鉄「中山」駅から「よこはま動物園」行きバスで約18分、「横浜」駅から「よこはま動物園」行きバスで約1時間

URLhttps://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/

住所:横浜市旭区上白根町1175-1

横浜市資源循環推進プラットフォームについて

横浜市資源循環推進プラットフォームは、令和6年10月に市内の廃棄物処理業者7社を中心に発足した取り組みです。

市内における動脈産業と静脈産業の連携を促進し、資源循環産業の活性化を図ることで、横浜市の資源循環施策を推進することを目的としています。

横浜市は、幹事企業7社との連携協定に基づき運営を支援しており、公民一体で議論を進めながら取り組みが行われています。

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この記事を書いた人

Zinのアバター Zin 編集スタッフ

動物が大好きで、これまでに保護猫活動にも取り組んできました。そこから動物園で暮らす動物たちの飼育環境にも関心を持つようになり、本プロジェクトを立ち上げました。
本業ではディレクター・プロデューサーとして映像や企画の仕事に携わっています。
推し動物は、ちょっと不機嫌そうな顔がたまらない「ヤブイヌ」です。