今回この記事を作成するにあたり、画像をご提供くださった皆さまに心より感謝申し上げます。
特徴と生態
国内で最も多く飼育されているテナガザルがシロテテナガザルです。

シロテナガザルではなく、シロテテナガザルです!
野生では樹冠部や中間層を中心に生活し、地上にはほとんど降りません。長い腕を使って枝から枝へと移動する「腕振り運動(ブラキエーション)」が得意です。






オスとメスのペアとその子どもからなる家族単位で暮らし、テリトリーソングと呼ばれる大きく美しい歌声でなわばりを守ります。
【参考動画】
タイトル:GIBBON SOUND EFFECTS – Gibbon Call and Loud Noise
URL:https://youtu.be/xGtBDiO4td4
テナガザル科(Hylobatidae)一覧
テナガザル科の分類や和名は、研究の進展や文献によって表記が異なる場合があります。ここでは国際的に広く採用されている分類に基づき、現時点での代表的な一覧を示します。
東南アジアに広く分布、最も種類が多いグループ。合計9種
- シロテテナガザル(Hylobates lar)
- アジルテナガザル(Hylobates agilis)
※別名:クロテテナガザル(ただし Nomascus concolor と混同されるため非推奨) - ミュラーテナガザル(Hylobates muelleri)
- アボットハイイロテナガザル(Hylobates abbotti)
※別名:アボットテナガザル - ヒガシボルネオハイイロテナガザル(Hylobates funereus)
- ボルネオシロヒゲテナガザル(Hylobates albibarbis)
※別名:ボルネオテナガザル


- ナンカテナガザル(Hylobates moloch)
※別名:ジャワテナガザル - クラウンテナガザル(Hylobates klossii)
※別名:クロステナガザル、クロスのテナガザル - ボウシテナガザル(Hylobates pileatus)
※別名:ピローテッドテナガザル、フタオテナガザル
インドシナ半島に分布。性差による体毛色の違いが大きいグループ。合計7種
- キタシロテナガザル(Nomascus leucogenys)
※別名:ホワイトチークテナガザル - キャンテナガザル(Nomascus gabriellae)
※別名:レッドシェンクテナガザル - オオシロテナガザル(Nomascus siki)
- クロテナガザル(Nomascus concolor)
- ハオテナガザル(Nomascus hainanus)
※別名:ハイナンテナガザル - トンキンテナガザル(Nomascus nasutus)
- ダオコテナガザル(Nomascus annamensis)
最大種を含む。1属1種のみ
- フクロテナガザル(Symphalangus syndactylus)
※別名:シアマン


インド北東部から中国南部にかけて分布。合計3種
- フーロックテナガザル(Hoolock hoolock)
- ミャンマーフーロックテナガザル(Hoolock leuconedys)
- スカイウォーカーフーロックテナガザル(Hoolock tianxing)
外見的な多様性
シロテテナガザル


顔の周囲には白い毛の「輪」が見られ、手足の先端も白いのが特徴です。体毛の色は褐色、茶色、黒など個体によってさまざまで、遺伝によって決まるのではなく、
日本での飼育と繁殖
シロテテナガザルは現在、日本国内の24施設で73頭が飼育されています。2000年からの25年間で計76頭が誕生しており、国内では毎年のように赤ちゃんが生まれています。直近では2025年8月、上野動物園でココとゆんゆんの間に赤ちゃんが誕生しました。






主な(シロテテナガザル)飼育個体一覧
- 旭川市旭山動物園:♀モンロー、♂ミール
- 札幌市円山動物園:♂コタロー、♀ラーチャ、♀ローラ、♂チャータ




- 釧路市動物園:♀マリア、♂ウタ
- 東京都恩賜上野動物園:♀ココ、♂ゆんゆん、赤ちゃん(未定)
- 東京都多摩動物公園:♂テテ、♀ミツ、♂ハリ






- 東武動物公園:♀ユウ、♀ニコ、♂こだま、♂そら、♀マコ
- 市川市動植物園:♂コテツ、♀アイ
- 日立市かみね動物園:♂アニィ、♂ユウタ、♀チィ
- 甲府市遊亀公園附属動物園:♂シロー、♀茶
- 羽村市動物公園:♂茶、♀おかゆ
- 金沢動物園:♂ユウタロウ、♀インタン
- いしかわ動物園:♀サクラ、♂ルル
- 日本モンキーセンター:♂ジャス、♂イレブン、♂ジョージ
- 伊豆シャボテン動物公園:♂ボビー、♀ユズ、♀陽ちゃん、♀ひなた




- 鯖江市西山動物園:♂テツ、♀ミヨ、♂康康、♂テテ、♀ノン、♂コム
- 神戸市立王子動物園:♀クリクリ、♂シモン
- 京都市動物園:♂シロマティー




- 福知山市動物園:♀福、♂金太郎
- 福山市立動物園:♂アンソニー、♀きなこ
- 高知県立のいち動物公園:♂ニタ、♀クリ




- ときわ動物園:♂五郎、♀メリー、♀メロン、♂シン、♂レモン、♂ココ、♂マロン、♂クッキー、♂ラッキー、♂テツロウ、♀メーテル
- 福岡市動植物園:♂ジャック、♀キャンディ
- 九十九島動植物園森きらら:♀モモ、♂与太郎、♀モンリー、♀ジュリ
- 鹿児島市平川動物公園:♂テナ、♀コウメ
展示方法の工夫
多くの動物園では柵を使った展示が行われています。一見窮屈に見えますが、柵によって立体的な行動が可能になり、運動量も増えます。
また、テナガザルは片手でも何かを掴んでいると安心するため、柵はむしろ生活に適した環境を作る役割を果たします。


一方、ときわ動物園や高知県立のいち動物公園では、テナガザルが水を嫌う習性を活かし、柵の代わりに水モートを使った展示が見られます。水に興味を示す個体もいますが、自ら入ることはありません。




世界一を記録した個体たち
- ♀マリ
1960年代に宝塚動植物園(2003年閉園)に来園し、1968年から1993年の間に29頭を出産。最多出産数として1994年にギネスブックに記載されました。閉園後に福山市立動物園に移動し、2018年に推定53歳で死亡しました。子孫は孫22頭、曾孫19頭、玄孫7頭、来孫2頭にまで広がっています。 - ♂オン
1959年に井の頭自然文化園に来園し、1988年に釧路市動物園に移動。2011年には国内最年長となり、2023年に死亡した時点で推定65歳以上。世界最高齢のシロテテナガザルでした。
まとめ


シロテテナガザルは、日本の動物園で最も多く出会えるテナガザルであり、美しい歌声としなやかなブラキエーションで多くの人々を魅了しています。各園で工夫された展示方法や、ギネス記録を持つ個体の存在など、国内飼育史には多くの物語が刻まれています。
今後も血統管理と保全を両立させながら、その魅力を次世代へ伝えていくことが期待されます。