今回はいつもの「動物ガチ勢の“ガチ勢の為の”動物図鑑」シリーズから少し派生した内容を…
ある日の夜、普通に課題をしていたら一件の通知が来ました
“ある小学生の坊や”の質問に対し、ZooPortal の担当者がリプライをしていたものでした。そこでなぜか僕のところにメンションがっ!!坊やの質問に対し“十分すぎる回答をしているのにもかかわらず”最後に「詳しくはRyuseiお兄ちゃんが教えてくれます」の文字が…
というわけで上司からの果てしない圧を背中に感じつつ、今回も動物の知られざる魅力や能力をつづっていきたいと思います。
質問の内容は「なんでヌーの顔は縦長なの?」
さあ、知られざるヌーたちの世界へ..!!!(重圧に押しつぶされそうな編集長)
ヌーって何?

ヌーと呼ばれる生き物は、某アーティスト以外にオグロヌー(学名:Connochaetes taurinus)とオジロヌー(学名:Connochaetes gnou)の2種が知られています。さらにオグロヌーはシロヒゲオグロヌーやクロヒゲオグロヌー、シロオビオグロヌーなど5つの亜種が知られていますが、オジロヌーは単型種と呼ばれ、亜種は認められていません。
東アフリカでの数百万頭とも言われる季節的な大移動が有名な種で、川に集団で飛び込んでいくのはみなさんどこかで見たことあるのではないでしょうか?

ウシ科ハーテビースト亜科ハーテビースト族ヌー属に分類される本種(2種)はアフリカ大陸の広い地域に分布し、ディズニー映画にも登場するなどかなり知名度のある種です。頭胴長170-240cm程度、体重200kg前後の中-大型草食獣で、日本では伊豆アニマルキングダムでシロヒゲオグロヌーのメスのミカンが飼育されているのみです。
Ryusei↓ヌーの面白い生態はぜひこちらから!


「なんでヌーは縦長の顔なの?」…それはね…


ご指摘の通り、ヌーはほかの草食動物とは違い、縦に長い特徴的な顔をしています。耳や目の直下に口や鼻があるような特徴を持っているのは草食獣の中でも数少ない特徴です。この形態的特徴を持つ理由として考えられるのは彼らの“食性”とそれに適応した頭骨を中心とした“上半身の形態的特徴”です。
彼らの食性は、当たり前ですが草食性です。その中でも、地面に生えている草本類(いわゆる草・粗飼料)を非選択的に食べるグレイザーと呼ばれる食性に分類されます。グレイザーにはウマやウシも分類され、北米大陸やアフリカ大陸の砂漠化サバンナ化に合わせて、硬く消化しにくいようなイネ科であったり、地面に生えた短い草でも食べることができるように進化してきた歴史があります。つまり、地面の草をバリカンのような口で刈り取ったり、奥歯(臼歯)で継続的にすりつぶす(反芻動物限定の特徴)ことが求められます。ということは、口腔内に草をかみちぎる部位と草を咀嚼する部位(その間の草をためておく部位)が必要になり、なおかつ体を地面に近づけなくても口が地面につく構造をもつことが生存に有利になります。よって草食動物は口(口吻・マズル)が長い種類が多くなるのです。
シロサイ(グレイザー)とクロサイ(ブラウザー)


木の葉を選んで(選択的に)食べるために小さく器用な唇をもつクロサイと、名前の由来にもなった幅広い唇を持つシロサイ!歯列の違いも歴然です!!
でも、わかってます。



なんでヌーだけあんな顔してるの?顔長いだけならシマウマとかスイギュウみたいな形でいいじゃん!!
さっきまでの情報じゃ絶対あの子満足しないな…
というわけでもうちょっと調べました。


結論から言えば、{わからない・明確な論文がない}というのが正しいです。しかし、一般的な知見から言えば、ヌーのあの角や体格がかかわっていると考えられます。上記のサイの例や、バイソンを考えてもらえばわかるように、頭骨が大きく、角のような重たいものを有する生き物はその重たい頭を支えるために肩が大きく盛り上がっていて首も太く短い形態に進化します。そしてヌー属は短草を利用する広吻型の短草スペシャリストであり、特に10cm未満の短い草を選ぶ傾向が研究で示されています。これらのような地面の短い下草を食べるために重たい頭・口を極限まで下に向けると顎を引いたような状態になります。そしてこの状態を維持するために継続的にこの体制になっていたら、通常の体制が頭を下げ顎を引いたような状態に近くなったと考えられています。ほかにもさまざまな要因が絡まっているようですが、結論を言うと、「ヌーは、地面の短い草を好んでよく食べるため、それに適した体つき、顔つきをして生き残ってきた」となります!



これで満足してくれるかな…?
- 口吻が下に向くことで、顔の真正面に障害物がなくなり、より広い視界を確保できる。
- 鼻が一番下につき、細長い口吻で広い鼻腔を確保できることで、より優れた嗅覚を確保できる(あの鳴き声を出すのもこれが原因か?)。
- 顎を引いたような状態であることで弱点である首を守りやすい
「じゃあなんで草を食べるのに顔が短い動物がいるの?」「なんで草食べないのに顔が長い動物がいるの?」


草食性の動物においても比較的吻部が短い動物は一定数います。
代表的なものを上げると人をはじめとする一部霊長類(マカク類、類人猿類など)、笹を主食とするジャイアントパンダ、地上最大の草食動物であるゾウ(長鼻目)などです。
これらの動物に共通してみられる特徴を考えてみると、その理由が見えてくるかもしれません…
それは、何かをつかむことができることです。霊長類は言わずもがな前肢が非常に器用であり、パンダも発達した手根骨(第6指・第7指)によって竹を保持し、ゾウはあの鼻を使ってどんな形状のものでもつかむことができます。つまり、原生している状態(またはそれに類似する状態。地面においてある状態など)の食物をとり、保管しておくことができるのです。ほかの草食動物では前歯で噛み切り、口腔内にて保持するという動作が必要なものをこれらの種では“手”という代替器官によって行っているのです。ということは、口腔内に広いスペースを確保する必要がなくなり、その分の栄養をほかの組織に回すことができる・平たい顔を持った生き物になるというわけですね。
では逆に、肉食獣で長い口吻を持っているのはどういう理由があるのでしょうか?


イヌ科動物に代表される長い口吻(マズル)を持つ肉食動物は捕食のために適した構造になります。
肉食動物の歯には、主に切歯(前歯)、犬歯(いわゆる牙、獲物を捕らえ保持する)、裂肉歯(肉を切り裂く役割)、臼歯(前臼歯)の4種があります。これらが適切な順序で並んでいるからこそ彼らの獲物にかみつき、引き倒し、息の根を止めて骨ごと肉を食べるという生態が実現できています。さらに先述したような獲物を保持する両手を持っている種も少ないため、彼らのマズルは長くなっています。さらに、顎の動きには“てこの原理”の応用であるため、マズルが長ければ長いほど口先の噛みつき速度が速くなります。しかし、噛みつく力は弱くなるので、ネコ科動物を中心とする急襲一撃必殺型の狩りをする生き物は短いマズルでパワーに重きを置いています。(顎周りの筋肉を強化したり、そもそも骨格から強靭にしたりする種類もいるので絶対ではありません)
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は動物たちの食性などから彼らの歯列、形態的特徴の理由を考察してみました。僕自身も知らないことだらけ、いまだに学術的な考証がなされていないものも多くありました。
こういうことを調べ上げて調査するのは、あの坊やにお任せするとしましょう…!(新たな圧)
- Jonathan P. Tennant, Norman MacLeod, Snout Shape in Extant Ruminants,
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0112035, (2014), Andrew A. Farke, Raymond M. Alf Museum of Paleontology, United States of America, 2026年5月18日閲覧 - Elena Mariotti, Francesca Parrini, Cornelius J. Louw, Jason P. Marshal, What grass characteristics drive large herbivore feeding patch selection? A case study from a South African grassland protected area, Centre for African Ecology, School of Animal, Plant and Environmental Sciences, University of the Witwatersrand, Johannesburg, South Africa, Conservation Ecology Research Unit, Department of Zoology and Entomology, University of Pretoria, South Africa, (不明), https://repository.up.ac.za/server/api/core/bitstreams/298d1a9c-bfb3-4c96-ac8a-1f896d59f5b1/content , 2026年5月18日閲覧


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