三重県多気町の「ごかつら池どうぶつパーク」。誰もが訪れられる小さな動物園です。
2024年6月29日、この動物園は1年以上の改修工事を経て生まれ変わりました。新たに園長として迎えられたのは、よこはま動物園ズーラシアの立ち上げに携わり、JICAボランティアとしてウガンダで野生動物保全に取り組んだ髙橋文彦さん。






開園から30年が経過し、施設の老朽化により改修が必要となりました。
存続か廃園か…
判断を迫られる中で、相談を受けた髙橋さんは現地を視察に訪れました。
しかし、リニューアル前に初めて園を訪れた髙橋さんの抱いた印象は、

「やばいところに来ちゃったなという感じです(笑)」
老朽化した施設。コンクリートで囲まれた昔ながらの展示方法。30年の歴史を持つこの動物園は、まさに存続の危機に立たされていました。
「リニューアルのご相談を頂きましたが、ここで動物の飼育は厳しいと感じ、最初はお断りしようと思いました。」
公営の動物園のように税金による支援はありません。入園料と皆さまからのご支援だけで、すべてをまかなわなければならないのです。動物たちの命を預かる責任、地域の宝を守り続ける使命。その重圧は、想像を絶するものがあります。
それでも髙橋園長は続けます。「若いスタッフたちが一生懸命、自分たちなりに頑張っていたんです。じゃあそこで何か、自分が今までの経験や知識で協力できないかな、というのがスタートですね。」
髙橋園長ってどんな人?
Ryusei気さくで、ご自身のXで一般の動物好きの方をフォローして界隈をざわつかせている髙橋園長ですが…凄い経歴の方です!






横浜市立よこはま動物園ズーラシアの開園メンバーとして、野生動物の飼育管理や希少動物の繁殖に携わってきました。その情熱は並々ならぬもので、インドのアッサム動物園にまで渡り、ゾウ使いとしての修行を積んだほどです。


動物園では単に飼育管理を行うだけでなく、動物との触れ合いを通じた教育普及活動にも力を注ぎ、国内初となる「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」の開催にも携わりました。


その後、活動の場を海外へと広げ、JICA青年海外協力隊としてウガンダへ赴任します。そこでは密猟者に家族を殺された孤児ゾウの飼育や、チンパンジー、ハシビロコウなどの保護鳥獣の管理に従事しました。帰国後は、この経験を活かしてJICA横浜や青年海外協力協会で開発教育の分野に携わり、年間100件を超える出前講座や訪問プログラムを通じて、次世代への教育活動に尽力しました。




さらに地球温暖化防止全国ネットでは環境教育や脱炭素の啓蒙活動に取り組み、現在はごかつら池どうぶつパーク園長として、これまでの豊富な経験を新たなステージで活かしています。動物、教育、環境保全という一貫したテーマで、人と自然をつなぐ活動に長年携わってきた方です。
現在、ごかつら池どうぶつパークの園長と兼任で、TCA東京ECO動物海洋専門学校の講師として若い世代の教育分野にも携わっていらっしゃいます。
ウガンダの孤児ゾウが教えてくれたこと
髙橋園長の原点は、ウガンダでの2年間にあります。


象牙の密猟者に母親を殺された孤児のゾウ。推定生後1週間の小さな命を、現地の飼育員たちと必死で守りました。野生のゾウは一度群れから離れると、もう戻ることはできません。一頭では生きていけないのです。
密猟が後を絶たず、農地開拓のために生息域が狭まり、世界中でゾウの個体数は減少し続けています。ウガンダの人々に、ゾウと触れ合い、野生生物保護の必要性を理解してもらうこと。それが、その小さなゾウに与えられた使命でした。
「アフリカで野生動物に出会うには、とてもお金がかかる。ゾウもキリンも見たことのない人がたくさんいるんです」
誰もが気軽に訪れられる動物園の大切さを、髙橋園長はウガンダの地で学びました。
「本物」との出会いを求めて
リニューアルオープンまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。


プレーリードッグの「むちこ」が土を掘って姿を消し、園内を総出で探したこと。ヤギが柵を飛び越えて脱走し、急遽対策を施したこと。限られた人員で、髙橋園長と若いスタッフたちは業者任せにせず、自分たちの手で動物たちの環境を作り上げていきました。




民間運営の動物園には、公営のような潤沢な予算も人員もありません。
一人ひとりが複数の役割を担い、朝から晩まで動物の世話、施設の管理、来園者対応に追われる日々。それでも、動物たちの飼育環境を少しでも良くしようと、スタッフは懸命に取り組んでいます。
休園日には獣舎の改修。閉園後には翌日の準備。動物たちが快適に過ごせるよう、観察を重ね、工夫を凝らし、一歩ずつ前進しています。


そして迎えたオープン当日。予想をはるかに上回る700人以上のお客さんが来園しました。






「まずはホッとした感じですかね。やっとちょっと新しい一歩が踏めたというのはあるんですけど、ホッとの方が大きいかな」
新しい動物園のコンセプトは、「ただの見世物だけじゃなくて、本物がここにいて、そのリアルさを感じてもらいたい」。その想いは、来園者の声となって返ってきました。
新たなスタートを切った「ごかつら池どうぶつパーク」。しかし、髙橋園長の挑戦は、まだ始まったばかりです。
公式YouTubeチャンネル



リニューアル前後の様子はこちらをご覧ください。
日本で2園のみ―カラカルの未来を守るために


2025年6月27日、ごかつら池どうぶつパークで悲しい出来事がありました。13歳のオスのカラカル「マック」が老衰のため亡くなったのです。
カラカルは、耳の先に特徴的な房毛を持つネコ科動物。垂直3メートルのジャンプ力を誇り、その美しさから「砂漠のオオヤマネコ」とも呼ばれています。しかし、日本で飼育されているのは、姫路市立動物園とごかつら池どうぶつパークのわずか2園のみ。マックの死により、一時期は日本の動物園で唯一となっていました。
幸い、2025年7月10日に若いメスのカラカルが来園しました。2020年生まれ、まだ5歳ほどの個体です。








時間はあまり残されていません。
カラカルは生後2年ほどで性成熟を迎え、寿命は12~20年。繁殖のためには、若いオスの個体を早急に導入する必要があります。メスが繁殖適齢期を過ぎてしまう前に――。
そこで園では早期導入のため、クラウドファンディングを開始しています。
日本で繁殖に成功すれば、それは希少なカラカルの保全に大きく貢献することになります。しかし、そのためには、オスの個体導入と飼育環境の整備が急務なのです。
アニ活!サポート
クラウドファンディングとは別に、Amazon欲しいものリストからのご支援も可能です。
貯まっているAmazonポイントを使用すれば、数百円からの支援が可能です。是非よろしくお願いします。
アニマルウェルフェアの実現に向けて
動物たちの幸せのためには、飼育環境の改善も欠かせません。
リニューアルでは、動物たちの生息地に近い環境を再現しました。カピバラには水辺を、プレーリードッグには土を掘れる環境を、ワオキツネザルには木々を。






限られた予算と人員の中で、スタッフは毎日、動物たちの様子を観察し、少しでも快適に過ごせるよう工夫を重ねています。獣舎の清掃、エサの準備、健康チェック。そして閉園後には、展示スペースの改善、遊具の製作、環境の見直し。
それでも、まだ十分とは言えません。
アニマルウェルフェア――動物の福祉。動物たちが心身ともに健康で、生き生きと暮らせる環境を整えること。それは、動物園の最も重要な責務のひとつです。
獣舎の改装、より広い展示スペースの確保、動物たちの習性に合わせた設備の導入。一つひとつが、動物たちの「生きる喜び」につながります。
私たちは、やるべきことがまだたくさんあります。そして、その取り組みを、もっと多くの方に知っていただきたいのです。
30年越しの夢、その先へ
2025年4月1日、ごかつら池どうぶつパークは日本動物園水族館協会(JAZA)への加盟を果たしました。30年前の開園時からの悲願でした。
これは、民間の小さな動物園にとって、大きな一歩です。全国の加盟施設との交流が深まり、絶滅危惧種の動物の飼育や、種の保存への貢献が可能になります。
しかし、髙橋園長は「これはゴールではなく、スタート」と言います。
髙橋園長には、さらに壮大な夢があります。
「ここでゾウを飼いたいですね、アフリカゾウ。夢です。夢。」


ウガンダで孤児のゾウを育てた経験。野生のゾウが密猟や生息地の減少で苦しんでいる現実を目の当たりにした経験。その経験を、いつかこの動物園で活かしたい。
まずは、目の前の課題を一つずつクリアしていくこと。カラカルのオス導入、獣舎の改装。それらが実現すれば、次のステップが見えてくる。
小さな動物園の、大きな夢。それは決して絵空事ではありません。「やばいところに来ちゃったな」から始まった挑戦が、わずか1年でリニューアルオープンという形を結んだように。
民間だからこそ、皆さまの力が必要です
公営の動物園には、自治体からの予算があります。しかし、私たちごかつら池どうぶつパークは、民間で運営される動物園。税金による支援は一切ありません。
入園料収入と皆さまからのご支援だけで、動物たちのエサ代、医療費、施設の維持管理、新しい動物の導入、スタッフの給与――すべてをまかなっているのです。
その責任とプレッシャーは、想像を絶するものがあります。
一頭一頭の動物の命を預かる責任。地域の子どもたちに学びの場を提供する使命。絶滅危惧種の保全に貢献する役割。それらすべてを、限られた資源の中で実現しなければなりません。
人員にも限界があります。だからこそ、優先順位をつけざるを得ない。動物たちの飼育、施設の安全管理、来園者へのサービス。それらに全力を注ぐ中で、広報活動にまで十分な時間を割くことができていないのが現状です。
私たちは、もっと皆さまに知っていただきたい。
毎日の飼育の工夫を。 動物たちの小さな変化への気づきを。 限られた予算の中で実現してきた改善を。 そして、これから実現したい夢を。
カラカルの繁殖。動物たちのための環境改善。それらすべてに、皆さまの力が必要なのです。
園長からのメッセージ


昨年の6月にリニューアルオープンしましたが、まだ半分近くのエリアが未改修のままで残っています。
今年は、酷暑の影響で来園数が半減し収入も減りました。
また物価高騰などにより経費も圧迫されています。
現状からは、未改修エリアを改修する資金を捻出することができず、未改修の状況が続いてしまいます。
そこで、今回クラウドファンディングを実施し、皆様からご支援いただき、野生動物の保全はもちろんのこと、動物の福祉をさらに高め、魅力もUPさせて、誇れる動物園にしたいです。
あなたの支援が、未来をつくる
人・動物・生態系が健康で、良いバランスで支え合い、持続可能な社会を作る。それが「ワンヘルス」の考え方です。
ごかつら池どうぶつパークは、その理念を実践する場所。誰もが気軽に訪れ、動物との出会いを通じて、命の大切さ、自然との共生を学べる場所です。


髙橋園長と若いスタッフたちは、今日も動物たちと向き合っています。プレーリードッグの「むちこ」が土を掘る姿を見守り、アルパカの健康をチェックし、来園した子どもたちに動物の魅力を伝えています。
税金に頼らず、自分たちの力で動物園を守る。その重圧と向き合いながら、それでも前を向いて歩み続けています。
しかし、カラカルのオス個体の導入は待ったなしです。若いメスが繁殖適齢期を過ぎてしまう前に、パートナーを迎える必要があります。獣舎の改装も、動物たちの幸せのために不可欠です。
そのためには、皆さまの力が必要です。
そして何より、あなたの支援が、子どもたちに「本物」との出会いを届けます。図鑑やスマホの画面では決して味わえない、生き生きとした命の輝きを。
「やばいところに来ちゃったな」と笑った髙橋園長の挑戦は、多くの人の想いに支えられて、確実に前に進んでいます。
小さな動物園の、大きな挑戦を、どうか応援してください。
- 所在地: 三重県多気郡多気町五桂992
- 開園時間: 10:00~16:30(最終入園16:00)
- 休園日: 毎週火曜日(祝日の場合は翌平日)
- 入園料: 大人900円、子ども500円
- 公式サイト: https://gokatsura.jp/
皆さまの温かいご支援を、心よりお待ちしております。











