はじめに

こんにちは!マレーシア在住のTokiです!
皆さん、動物園って、インスタで何を発信してると思いますか?」
かわいい動物の写真?イベントのお知らせ?それとも、実は動物とは無関係な内容?
世界中の動物園が、インスタを通じてさまざまなメッセージを発信しています。
でも、その内容は国や地域によって驚くほど違うんです。
では、日本とドイツではどう違う?民営と公営では?
動物園のインスタを見ると、その国の価値観や動物との関わり方が見えてくるかもしれません。
今回は、そんな「動物園のインスタ発信」をテーマに、世界各地の園の投稿内容を比較しながら読み解いていきます。
- この記事は特定の国、文化、施設、会社、個人等を否定・攻撃するものではありません
- この記事内に記載されている施設を訪問する際は、自己責任でお願いいたします
- この記事の調査はあくまで個人で楽しみながら簡易的に行った物であり、科学的に裏付けされていません



あくまで個人の感想としてお楽しみいただければ幸いです!
調べた動物園
今回は、世界9か国、各国5カ所の動物園のインスタを確認し、投稿内容を調べてみました。
まずは、調べる国の選定から。これらの条件で調べる国を選びました:
- インスタが一般的に使用されている
- 動物園が複数ある
- 地理的、経済的になるべく分散している
今回選んだ国はこちら!
国名 | 地域 | 国連分類 |
日本 | アジア | 先進国 |
マレーシア | アジア | 開発途上国 |
アラブ首長国連邦 (UAE) | アジア | 高所得開発途上国 |
インド | アジア | 開発途上国 |
ドイツ | ヨーロッパ | 先進国 |
南アフリカ | アフリカ | 開発途上国 |
アメリカ | 北米 | 先進国 |
ブラジル | 南米 | 開発途上国 |
オーストラリア | オセアニア | 先進国 |
次に、それぞれの国の中で、これらの条件に当てはまる動物園を無作為に選びました:
- 公式のインスタがあり、最近投更新されている
- 園が一般に開放されており、動物の展示を目的としている
- 公営や民営等、同じ国の中で営業形態を分散させる
上記の条件をもとに、今回調べた動物園はこちら!
9か国から各国5園で合計45園調べました。



動物園の名前をクリックすると調べた公式アカウントが表示されるので、気になるからは覗いてみてくださいね!
調べた方法
今回は、各園のインスタを実際に確認し、投稿頻度と投稿内容をこのように調べてみました。
投稿頻度
今回は、2025年7月28日(日本時間)を起点として、そこから過去10回分の投稿をさかのぼり調査し、投稿頻度を調べてみました。
調べる対象は「投稿」のみとし、ストーリーズやリール、ライブ配信などの更新はカウントしていません。
また、コラボ投稿については、動物園や園内施設の公式アカウント側が主体となっているもののみを1件としてカウントしています。
このように条件を絞ることで、「公式アカウントがどれくらいのペースで情報発信しているか」をなるべく正確に調べてみました。
投稿内容
続いて、投稿内容を調べてみました。上記の過去10回分の投稿を確認し、このように分類してみました:
分類 | 項目 | 内容例 |
動物・環境 | 飼育動物の情報 | ・飼育動物の紹介 ・園内エリア紹介 |
動物・環境 | 飼育動物の近状 | ・出産、死亡、移動 ・直近の様子 |
動物・環境 | 動物・環境全般の情報 | ・動物全般の情報 ・環境保護の情報 |
運営・施設 | 営業情報 | ・営業日や料金の案内 ・臨時休園の案内 |
運営・施設 | 動物・環境関連イベント | ・餌やり/ふれあい体験の案内 ・環境セミナーの案内 |
運営・施設 | 地域のイベント | ・マラソン大会の案内 ・ワクチン接種の案内 |
運営・施設 | スタッフ・ボランティア | ・スタッフ/ボランティアの紹介 ・スタッフ/ボランティアへの感謝 |
運営・施設 | 施設の紹介 | ・売店/飲食店の紹介 ・施設全般の紹介 |
社会・教育 | 学校訪問 | ・遠足に来た学校の紹介 |
社会・教育 | ユーモア・話題性狙いの投稿 | ・ネタ投稿 |
社会・教育 | 記念日投稿 | ・世界○○の日の紹介 ・元首誕生日のお祝い |



なるべく正確に調べましたが、分類が難しい投稿は自身の判断で一番近いところに入っています!
結果と考察
前置きが長くなりましたね。皆さんお待ちかねの結果と考察です!国や営業形態で投稿に違いは出たのでしょうか?
投稿頻度
2日に1回は投稿をしているということですね。これだけ見ると、動物園のインスタは投稿頻度が高いと思えるかもしれません。
では、国別ではどうでしょうか?


国別に見てみると、かなりの差がありますね。
更新頻度が一番高いのが日本で1.0日(毎日1投稿)!僅差でアメリカとオーストラリアも並んでいます。この3か国は比較的投稿頻度が高い傾向ですね。
逆に、ブラジルやマレーシアは頻度が低く、3~4日に1回の投稿でした。
何故ここまで違いが出るのでしょうか?
ヒントとなるのが、Robert Levine(カリフォルニア州立大学心理学教授)が過去に行った”The Pace of Life in 31 Countries”(和訳:31か国における生活のペース)という研究です。
この研究では、時間感覚が文化ごとに大きく異なることを科学的に調査していて、今回の対象国に関してはこのような結果を残しています:
国 | 時間の感覚 |
日本、ドイツ | 速い |
オーストラリア、アメリカ | 比較的速い |
インド | 比較的遅い |
ブラジル | 非常に遅い |
UAE、マレーシア、南アフリカ | 調査対象外 |
時間の流れが速い国はインスタの投稿頻度が高く、逆に流れが遅い国は投稿頻度も低いと考察できます。今回調べたインスタの投稿頻度は、多少の違いはあるものの概ねLevine氏による調査の通りでした。
更に詳しく知りたい方はこちらから研究を読んでみてください:
The Pace of Life in 31 Countries
https://www.researchgate.net/publication/43117638_The_Pace_of_Life_in_31_Countries
では、運営形態別ではどうでしょうか?


公営の全園の平均が1.4日に対し、民営は2.7日でした。倍近い差が開いていますね。
何故ここまで違いが出るのでしょうか?
ヒントとなるのが、Stephanie M. Rowanによりワシントン大学で発表された修士論文”Exploration of how Zoos are using Instagram to further their Conservation Education and Efforts”(和訳:動物園がインスタグラムを活用して保全教育や保全活動を推進している方法の探究)です。
この研究は、6カ所の動物園のInstagram投稿の分析や広報担当者へのインタビューを通して、インスタを通じて「保全教育」にどのように取り組んでいるかを定性的・量的両面から分析したものです。この中で、公営園は「公共性」への取り組みが公式ミッションに含まれるとの記載があります。
公営園は広報など専門スタッフを配置して業務としてSNSの発信を行っていることから、全体的に投稿頻度が民営園よりも高くなるのではないかと考察できます。
更に詳しく知りたい方はこちらから研究を読んでみてください:
Exploration of how zoos are using Instagram to further their conservation education & efforts
国の経済力別でも見てみましょう。


先進国の全園の平均が1.4日に対し、開発途上国は2.7日でした。こちらも倍近い差が開いていますね。
何故ここまで違いが出るのでしょうか?
ヒントとなるのが、Jacob PoushterらよりPew Research Centerから発表された論文”Social Media Use Continues to Rise in Developing Countries but Plateaus Across Developed Ones”(和訳:発展途上国ではソーシャルメディアの利用が引き続き増加しているが、先進国では横ばいになっている)です。
この研究は、世界各国のスマートホンやSNSの利用率を調査・分析しています。
今回調べた国を全てカバーしてはいませんが、このような結果が出ています:
国 | 分類 | スマートホン保有率 | SNS利用率 |
日本 | 先進国 | 59% | 39% |
インド | 開発途上国 | 22% | 20% |
ドイツ | 先進国 | 72% | 40% |
南アフリカ | 開発途上国 | 51% | 43% |
アメリカ | 先進国 | 77% | 69% |
ブラジル | 開発途上国 | 54% | 53% |
オーストラリア | 先進国 | 82% | 69% |
上記を見ると、例外はあるものの開発途上国は先進国に比べてスマホ保有率・SNS利用率が低く、これが投稿頻度の減少に繋がった可能性が考察されます。
更に詳しく知りたい方はこちらから研究を読んでみてください:
Social Media Use Continues to Rise in Developing Countries but Plateaus Across Developed Ones
全体の投稿内容
続いては、投稿内容を見てみましょう。


まずは全園で見てみましょう。やはり飼育している動物の紹介が圧倒的に多いですね。全体の約3分の1を占めています。逆に、受け狙いのユーモアな投稿や、遠足に来た学校の紹介などはかなり少なかったです。
こちらは国別の投稿内容です。小さくて少し見にくいですが、国ごとにかなり違いがあるのがわかりますね。


項目ごとの投稿内容
ここからは、項目ごとに見ていきましょう。





他国が概ね横ばいの中、アラブ首長国連邦が圧倒的に飼育情報を発信していますね。





動物の近状は日本が一番発信していますね。続いてドイツやオーストラリアが並びます。出産や死亡の報告がほぼ発信がない国が多いことを考えると、情報の発信はとてもありがたいですね。





動物や環境全般に関する発信はどの国も非常に少ないですね。一番高いのはライオンについて発信している南アフリカでしたが、それでも約9%です。





チケットや営業時間などの情報発信は、全体的に低めです。しかし、マレーシアだけはチケットの値段や営業時間を積極的に発信しており、全体の半分近くがこの情報です。





餌やり体験やガイドツアーなどの情報はどの国も発信していましたが、特に日本が多いですね。





日本ではあまり馴染みないですが、海外では動物園でマラソン大会、音楽会、ワクチンの集団接種等の地域のイベントが行われています。投稿数は少ないですが、日本以外の全ての国で発信していました。





こちらも日本ではあまり馴染みないですが、海外ではスタッフやボランティアの方々をSNSで紹介したりしています。中には、スタッフの誕生日を祝う投稿などもありました!
スタッフに関する投稿はアメリカで特に多いですが、これは投稿を調べた期間がNational Zookeeper Week(和訳:動物園飼育員に感謝する1週間)と重複していた影響が大きいと思われます。
これは毎年7月第3週におこなれるイベントで、園や来園者が日々働いている動物園飼育員に感謝を伝えたり、飼育員の仕事を紹介したりしています。この期間中のアメリカの動物園は必然的に飼育員に関する投稿が増え、今回の結果に影響されたと考察できます。
更に詳しく知りたい方はこちらを読んでみてください:
National ZooKeeper Week





園内のお土産屋さん、飲食店、図書館等の施設を紹介する投稿も少ないですがありました。
宿泊施設のレストランを多く宣伝していたオーストラリアの投稿が例外的に少しだけ多かったです。





園を訪問した学校団体を紹介する投稿は日本ではプライバシーの関係で難しそうですが、国によっては少数ですが投稿があります。





こちらもかなりの少数派ですが、飼育動物をネタにしてユーモアあふれる投稿を行っている園もあります。





「世界○○の日」等の記念日は、日本以外の国では一定数投稿されています。一部、元首誕生日や動物園の開園記念日などを祝う投稿も含まれています。
投稿はインドで特に多いですが、これは調べた期間がWorld Tiger Day(和訳:世界トラの日/Global Toger DayやInternational Tiger Dayとも呼ばれる)と近く、トラの保護活動が盛んなインドでの投稿が増えたことが要因の一つと考えられます。
World Tiger Dayは毎年7月29日と定められており、動物園や自然保護団体がトラの保護を改めて呼びかける日です。
更に詳しく知りたい方はこちらを読んでみてください:
こうして世界で比べてみると、国ごとに動物園のインスタの投稿内容はかなり差があるということがわかりますね。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
「動物園のインスタって、何を発信してるんだろう?」
そんな素朴な疑問から始まった、ちょっとオタクでちょっとマニアックなインスタ分析旅。
気がつけば「動物園を見る」というより、「その国の人が動物園をどう見せているか」を見る旅になっていました。
同じ「動物園の公式インスタ」でも、国や運営形態によって、投稿頻度も内容もこんなに違いがあるんです。
投稿に表れるのは、単なる情報発信だけではありません。そこには、その国が動物にどう向き合っているか、地域社会とのつながりをどう考えているか、そして、SNSというツールをどう活用しているか――そんな姿勢がにじみ出ています。
今回の調査はあくまで簡易的なものでしたが、インスタという身近なツールを通して、世界の動物園の多様な姿を垣間見ることができました。
これを機に、ぜひあなたも身近な動物園のインスタをのぞいてみてください。
きっと、新しい発見があるはずです。