動物ガチ勢の“ガチ勢の為の”動物図鑑第6回は…いよいよゾウの飼育!!
2026年2月から3月にかけて、タイでゾウ遣いの修行をしてきました。約10頭のアジアゾウに囲まれて寝泊まりし、現地の生活にも触れたこの貴重な経験を通じてわかったこと、何を見て聞いて感じたのか。長ったらしく書いていけたらと思います。2026年8月2日(再放送22日)放送のダーウィンが来たにてちょっとだけ放送された内容をさらに深堀していきます。
前置きはこの辺にしておいて…
さあ、知られざるたちのゾウ達のさらに深い世界へ..!!!
経緯
僕がずっと気になっていることがあります。それが…
Ryuseiゾウって、どうしたら幸せなんだろう…
高校の時、卒業論文で「ゾウは多少の飼育面積の差や環境エンリッチメントの差では異常行動の量にあまり差が出ない」とわかりました。それが彼らの知性によるものなのか、1日10kmとも言われる広大な行動範囲によるものなのか、仲間を重んじる社会性によるものなのかはわかりませんでしたが、それでも1日6時間観察したうちのの20~30%にも及ぶ異常行動は幸せとは思えないものでした。


どんな風に飼育するのが正しいのか。そもそも準間接飼育が正しいのか、直接飼育で飼育員が群れの仲間としてかかわっていた方が幸せなのか、ゾウ遣いは実際虐待なのか、いろいろ気になりました。
その後、アフリカでアフリカゾウの孤児院を見ました。私営保護区を利用したあの広大なスペース、仲間と楽しそうに遊ぶゾウ達…体重7トンもあるような巨大なオスが池で大はしゃぎしていました。











あんな施設は今の日本じゃ作れない…飼育法も無理があるし人の理解も足りない
ぶっちゃけそんな感想でした。アフリカゾウをこんな狭い国で狭い動物園で飼うのは無理だなと…
じゃあ家畜として飼育されることもあるアジアゾウなら教育効果も見込めるのか…?それが次の疑問でした。どんな飼育をすれば幸せにゾウを日本で飼育できるのか、調べまくる中でそれが一番難しいなと感じました。
そんな中、卒論で情報提供をしてもらっていたタイのゾウ飼育施設が、ゾウ遣いの訓練プログラムをしていると知りました。
これは行くしかない…!!すぐに連絡を取り、現地に行くことを決めました。なんだかんだダーウィンが来たに取材されることも決まり“僕のアニマルアカデミア~ゾウ遣い修行編~”が始まったのです。





初めての一人海外旅行。貯金がほぼ全部吹っ飛んだこともありますが、いろいろ冷汗が…w
- 直接飼育
人間が動物と同じ空間(飼育エリア・獣舎)に入り飼育作業をするもの。
安全性に少し欠けるが、動物のケアや出産の介助などがしやすくなり、展示エリア外を歩けるようになれば動物の行動範囲も広がる。 タイやインド、アフリカなどゾウの原産地で多く見られる飼育法。 - 間接飼育
人間と動物が同じ空間には入らず、接することもほぼない飼育法。 人に危害を加える危険なゾウなど一部にのみ使われることもある飼育法。 - 準間接飼育
柵を隔てて人間と動物が接する方法。動物と同じエリアに入ることはなく安全性も担保されるが、ハズバンダリートレーニングなどを通じて動物のケアも行うことができる。 欧米を中心に近代的な飼育法として広まってきている。
エレファントホームにて


僕がお世話になったのは、タイ北部、チェンマイにある「タイ・エレファントホーム」です。ここは日本人のお客様も多く、スタッフも日本語をたまに使うので、僕も滞在期間中ほぼ毎日日本語を使いました。


初日はまさかのオスゾウに乗りました…若いオスで、キバもしっかりとありました。
…まあ怖いww もう腰が引けてますww
高さ約3m、鞍も手綱もシートベルトもなんもなし。常に揺れ動いて、ケツの下では巨大な肩甲骨が動く…つかめるのは頭のコブのみ。下手に落ちればパニックを起こした約7トンに踏まれてさようならか、崖の下へ真っ逆さま…
全神経を頭をホールドする太ももと両手とケツに注いで山を登り、初日を終えました。
水浴びもしましたが、寝転がるときに巻き込まれないか怖いったらない…適度に触れ合って、まずは楽しむことを優先しました。


翌日からは日本人ゾウ遣いの方も合流し、いよいよ本格的にトレーニング!僕の担当個体は17歳のメスになりました。お名前はチチ!ちょっとビビりでバイクの音を聞くとさっと僕の後ろに隠れるような女の子です。


早朝からのウンチ掃除から給餌、山に登って泥浴びや放牧、体を洗って帰宅し、夕方にはゾウのトレーニングや騎乗練習。そんな日々でした。
- 起床&獣舎清掃・給餌
夜の間にたまったウンチの掃除。朝ごはんは地元も農家からもらったトウモロコシの茎(ソルゴーみたいなイメージ)が10キロ - 水浴び(トレーニング)
係留を外して、蛇口に移動させて、水を飲ませたり、足を洗ったり、座らせて背中を洗ったり…移動・保定・指示だしなどの飼育技術を総動員するトレーニング。そのまま騎乗の練習をすることも - 朝食(ヒト)
- お客さんと一緒にゾウに乗って山へ
一人一頭ゾウに乗って片道数時間の山登り。道中草を引きちぎってお弁当にする子や“道草を食う”子もいたり、個性豊かなゾウ達と一緒にお散歩します。山小屋でお弁当を食べるときはゾウを放して放牧状態。山の中を自由に動いてご飯を食べます。
そのあとは泥浴びをしてから下山。川へ向かいます。


- 水浴び
人もゾウも全部の汚れを流します。たまに大量の水が降ってくることもありますが、決してゾウ遣いが仕向けてファンサービスしているわけではありません() - 帰宅
- 自由時間
お客さんが帰った後は疲れて昼寝しちゃうことも…慣れてきたらゾウと一緒にいたり、バナナで親交を深めたり、いろんなトレーニングを試したりもします。 - 夕方のお世話
朝と同じように、糞の清掃・給餌・水浴びをします。朝はできなかったことが夕方で来ていたり…!! - 夕飯(ヒト)
- 就寝
とんでもなく疲れます。9~10時には爆睡です。
いろいろ感じたこと


まず驚いたのが餌の組成。朝夕の決められた給餌で与えられたのはトウモロコシ20㎏のみ。そのほかはお客さんからもらうバナナやサトウキビ、そして放牧で食べる野草のみです。自分で選択して餌を食べられる上に、安定してコストを抑えた給餌ができる環境ならではですが、数値的な栄養管理をせずに体形維持や健康管理をできていることに驚きました。そして圧倒的な繊維質の量。トウモロコシも野草も、時々食べる竹や枯れ木も、好んで食べるサトウキビも繊維の塊です。何ならチチはトウモロコシの葉っぱは残して茎だけを器用に食べていました。彼らのフンを見ていても、繊維質が多く混じっていてしっかりとした固形のものでした。もはや牧草みたいなものはほぼ食べていないようでした。



チチはトウモロコシの葉っぱをとって茎だけにして手渡しすると嬉しそうにバリバリ食べちゃうのがまた可愛くて…(滅)
次に行動範囲。お客さんの選ぶプランによりますが、長いプランだと片道2時間程度の険しい山道を登り、頂上で1時間ほど過ごしてまた下山します。行動様式としては、“長い距離を移動して、道中で餌を探して食べる”ほぼ野生に近いものになります。日本の動物園とは、常同行動を“移動”とカウントしても比にならないほどの運動量です。
蹄も異常な個体はあまり見られず、やはり運動量によってここまで日本の子と差が出るのかと気づかされます。



これは今のままじゃ日本はいけないな
そう感じさせられた経験にもなりました。


そして最後に、ゾウとの接し方について。
ここはかなり賛否が分かれると思います。エレファントホームでも飼育やトレーニングの仕方にかなりトレーナーの個人差が見て取れます。できるだけ痛みを与えないように、指示に従わないときは威圧だけで済ませる人もいれば、指示に従わなかったら痛々しくなるくらいたたく人もいます。傷があるゾウもいますし、ナイフを使うゾウ遣いもいます。
ここで重要なのは、すべてのゾウ遣いがゾウに痛みを強いているかということです結論は全く異なります。ゾウを殴るゾウ遣いもそうでない人も、ゾウを大切に思っています。その結果、人に危害を加えて辛い境遇にならないように厳しく指導する人もいるのです。タイエレファントホームでは、ゾウが指示に従うようにトレーニングを繰り返し学習させ無駄な暴力をなくし、他にも係留の廃止やゴンドラを用いた騎乗の廃止など、ゾウに負担のかからないような飼育を目指しています。
その結果、放牧中はもちろんのこと異常行動も日本に比べれば少ないように感じました。初期の調教で多少の痛みや恐怖を感じることがあると思いますが、個人的にはウマの初期教育として日本の大学でも教えられている方法にも似通う部分が大きいのかなと思います。


多少の痛みで異常行動が見られにくい飼育か、痛みナシ飼育員の安全も確保されるが異常行動が見られる飼育…あなたはどちらがより良い飼育と思いますか?
まとめ
僕は、最後までこの問いに結論が出ませんでした。
どちらの飼育法でもデメリットがあって、そのどちらを取るべきなのかに正解はなかなか出せるものではないと思います。
日本国内でも新しい展示場が多くできてきています。
でも、どこの展示場を見ても“前より広くなっただけ”で、“ゾウにとって十分足りる”とは到底思えません…彼らの真の幸せを願うなら、“飼育しないこと”なのかもしれませんが、種の保存や教育普及の役割がなくなることはあまりにも致命的です。とにかく、今のやり方ではいけない…でもどうするのがベストかなんてわからない…


また近いうちにタイを訪れようと思います。前回はゾウについて学ぶだけで精一杯でした…
今度はクリッカーを用いたトレーニングや、正の強化子を用いたオペラント条件付けがどれだけ通用するのか、面積が小さくても直接飼育は有用なのか、日本のゾウ達が幸せになれるようにいかせるものはないのか、きちんと探すために行こうと思います。


もっとゾウ達が幸せになれる…そんな未来が早く来るように……頑張らなきゃと感じた旅でした。


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