二枚貝ホタテ

こんにちは。二枚貝ホタテです。

前回・前々回の記事ではメディアミックスコンテンツ「けものフレンズ」を取り上げました。けものフレンズ。略してけもフレ。けフと呼ぶ変な人もたまにいますが、そういう人には近寄らない方がいいです。

けフは動物たちがヒトの姿になったキャラクターである「フレンズ」たちがたくさん登場します。そこで、日本各地の大型動物園でフレンズの元になった動物にどれくらい会えるかを数えました。

フレンズはほぼほぼ人間そのものですが、その外見や性格、嗜好や発言には元になった動物の特徴が引き継がれています。動物好きとしては、元の動物のどんなところがフレンズに引き継がれているかを考察するという楽しみ方もあります。

今回は、けもフレとさらにもう1つ、ポケモンに注目することにしました。ポケモンにも、現実の動物とよく似た姿のものがたくさんいるからです。元の動物が持つ特徴と、キャラクターが持つ特徴、その共通点を考えれば、動物の魅力が浮き彫りになるのではないでしょうか?

フレンズや一部のポケモンは動物が元ネタになっています。キャラクターをデザインする人がモチーフにしたい動物を徹底的に調べあげて、「この動物にはこんな特徴があるのか。まさに、この動物を象徴するような魅力的な特徴だ。キャラクターに活用しよう!」と考えているはずです。つまり、動物とそれをモチーフとしたキャラクターの共通点を調べることは、元の動物が持っている魅力的な特徴を明らかにすることなのです。そしてその特徴はキャラクターにも引き継がれている。つまりキャラクターの魅力を見つけることにもなります。だって、その魅力的な特徴は双方に共通しているのですから。

どうですか?動物とキャラクターの共通点探し、楽しそうだと思いませんか?

今回注目するのは日本で普通に見られる水鳥、カワウとウミウ。そしてそのフレンズの2人と、うのみポケモンのウッウ。全部で5種を見ていきます。前編ではウがどんな鳥なのかを紹介し、後編ではキャラクターたちとウの共通点を考えます。

ウ。川や海辺にいる黒い水鳥で、東京の都心でも、上野の不忍池に行けばたくさん見られる珍しくない鳥です。

野生のカワウ(上野動物園・鵜の池)

動物園で野生のウに出会うこともあります。まるで自ら勝手に展示されにきたみたい。下の画像は名古屋市の東山動植物園のアジアゾウのエリアで、手前にウがいます。ゾウを見に来たのかな?

アジアゾウのエリアに来た野生のウ(東山動植物園)

もしかしたら小中学校の時、社会の授業で長良川の鵜飼を習ったり、あるいは国語の授業で「鵜呑みにする」「鵜の目鷹の目」「鵜の真似をする烏」といった諺を勉強したかもしれません。日本では昔からなじみのある鳥、ウ。その魅力を見つけてみませんか?

ヘビと、カツオと、軍艦と。

ウはかつてペリカン目というグループに入ってました。後ほど話しますが、足の形はペリカンとそっくりです。それに、ウの口元には伸縮する袋のような器官があって、これもペリカンと似ています。今でも上野動物園にはウがペリカン目に入っていた頃の分類が書かれた看板があります。

上野動物園の解説

上野動物園の池に来る鳥の解説を読むと、カワウが「ペリカン目ウ科」と記載されています。

科学が進展し、DNAの解析により鳥の分類が再編されていくと、ウはカツオドリ目に属するようになりました。上野動物園内には最新の学説に基づく解説もあります。知らない人が見たら、どっちなんだよ!と怒りそう。

上野動物園の解説

最近設置されたであろう看板では「分類:カツオドリ目 ウ科」と記載されています。

カツオドリ目にはウ科、ヘビウ科、カツオドリ科、グンカンドリ科の4グループがいます。ライフスタイルは違いますが、みんな魚を主食とする水辺の鳥です。

ヘビウ科

細長い首と鋭い嘴を持つ水鳥です。潜水が得意で、槍のような嘴で魚をブスリと突き刺して捕まえます。豪快ですね。自分の知る限り、日本には野生にもいないし、動物園にもいません。いつか水中で狩りをする様子を水族館で見てみたいです。

カツオドリ科

海中の魚群を目掛けて空から飛び込み捕まえます。まるで巨人が空の上からダーツをしているかのよう。シロカツオドリが落下する速さは時速110kmに達するとも言われています。豪快ですね。

アウトドアファッションブランドCHUMSのロゴに描かれている「ブービーバード」はアカアシカツオドリです。都心にはいませんが、カツオドリは小笠原諸島などの離島、あるいはそうした島に行く船の上から観察できるんだとか。

グンカンドリ科

泳ぐのは苦手で、飛んでいる他の水鳥を襲撃して魚を掠めとります。ある意味一番豪快ですね。キリバス共和国の国鳥になっていて、国旗にもコグンカンドリが描かれています。日本国内では生きた姿をほぼ見られない鳥です。

オオグンカンドリの標本(国立科学博物館・鳥展)

どれも個性がキラリと輝く面白い水鳥たちです。いや、水鳥と呼んでいいのか微妙な鳥もいますが・・・。ただ、この3科の鳥に会いにいくのはちょっとハードルが高いですね。日本の都心部や、動物園・水族館で生きた姿を見ることはできません。

では、今回の主役であるウ科に注目しましょう。カツオドリ目に属する61種のうち42種がウ科です。日本に生息するウ科の鳥は、カワウ・ウミウ・ヒメウ・チシマウガラスの4種。このうちヒメウ・チシマウガラスは北海道にいて、本州で暮らす筆者がよく見ているのがカワウとウミウです。

そっくり!カワウとウミウ

カワウとウミウは見た目がよく似ています。見分けるポイントですが、クチバシの付け根に黄色い部分があって、ここの形が違います。

ウミウ(かみね動物園)

まずはウミウをご覧ください。クチバシの付け根、目の下を見ると黄色い部分がありますよね。ここは羽毛がなく皮膚が露出しているところ。ウミウの黄色いエリアは、嘴の反対側が後ろに向かって尖っています。

カワウ(天王寺動物園)

次はカワウを見てください。クチバシの付け根はこちらも黄色いですが、後ろに向かって尖っていないのが分かるでしょうか?

ウがすぐそばに来てくれたら分かるでしょうが、野鳥のウが人の近くまで来てくれることはそうそうないので、基本的に離れた場所にいるウのクチバシの付け根の形を見て識別する必要があります。

一応他にも違いがあって、ウミウの方が少し大柄ですが、これも遠目から見たらよく分かりません。色も違っていて、ウミウが緑っぽい黒、カワウが茶色っぽい黒といわれていますが、光の当たり方などによってはカワウだって緑っぽく見えます。

では、同定にチャレンジしてみましょう。東山動植物園のアジアゾウ前にいたあのウはどっちでしょうか?下の画像をご覧ください。これはウミウ?カワウ?

野生のウ(東山動植物園)

皆様、どっちのウか分かりますか?

黄色い部分が後ろに向かって尖っているので、これはウミウですね!多分。

東山動植物園はそこまで海に近いわけではありませんが、ウミウがいるようです。名前に川・海とつくように、カワウが川や池に、ウミウは海にいることが多いのですが、カワウが海にいることも全然普通にあるし、逆も然りです。だからいる場所も識別には使えません。

ややこしいのが長良川の鵜飼。川なのに、カワウじゃなくてウミウです。理由はウミウの方が大きくて丈夫だからとも言われています。茨城県日立市の伊師浜海岸の崖にウミウ捕獲場があって、ここで捕まえられたウミウが長良川に運ばれ、鵜飼に使われています。

そんなウミウの英名はJapanese cormorantといいます。Japaneseというとおり、日本、中国、朝鮮、ロシア東部にしかいない鳥です。逆にカワウは世界中のいたるところに広く生息しています。

ウは優秀なスイマー

ウの最大の特技は、潜水して、高速で泳ぎ、魚を捕まえて食べること。陸上の動物なのに、水中のスペシャリストである魚と水泳対決で勝つってすごいことですよ。川で泳いでるアユに追いついて口で咥えて捕まえるなんて、金メダリストの水泳選手でもきっと不可能でしょう。

ウは泳ぐ時に翼を使いません。折りたたんだまま泳ぎます。使うのはみずかきのついた足。鳥の足の指は大抵4本ですが、ウの足の指は4本とも前の方を向いていて、その間に3つのみずかきがついています。これは全蹼足(ぜんぼくそく)という形の足で、みずかきが最大限ついた水泳特化の足を持っているのです。ちなみにウはかつてペリカン目に入れられていたとお伝えしましたが、ペリカンも同じく全蹼足です。

ウの高速潜水について知るために、カモやペリカンといった水鳥と比較してみましょう。カモなどはお尻にある尾脂腺(びしせん)という器官から出た油分を羽毛に塗りたくります。油を塗った羽毛は水を弾いて全然濡れません。そして水を弾く羽毛の隙間には空気がたくさんたまります。羽毛と空気のガードのおかげで体が直接水に濡れませんから、冷たい水に入ってもへっちゃらなわけですね。一方、ウの羽毛は水を弾く力が弱いです。空気があんまりたまらないので、潜水する時に有利。浮き輪を身につけた人が潜水したり速く泳ぐことができないですよね。ウは羽毛の隙間の空気を減らすことで高速遊泳を可能としているのです。

なんでもできるスーパーバード!?

ウは泳ぐだけではなく飛ぶこともできます。もっとも、翼が退化した飛べないウというのもいて、ガラパゴス諸島に暮らすガラパゴスコバネウがそれです。

飛べるウの話に戻ります。カワウやウミウは子育てをする時、地上より安全な木の上に巣を作ります。長い草や木の枝を集めて、木の上で組むのです。夏しか繁殖しない鳥も多いですが、カワウの繁殖期は冬から夏までかなり長めです。冬から春にかけてカワウの顔の羽毛は白くなり、白髪鵜(しらがう)と呼ばれます。求愛のために色が変わる婚姻色です。

2025年12月29日に撮影した野生のウ
(伊豆・三津シーパラダイス)

潜水し、高速で泳ぎ、魚を捕らえる。空も飛ぶ。木の上で枝を組んで巣を作り子育てする。ウはなんでもできる、身体能力抜群の器用な鳥です。

・・・本当でしょうか?

高い能力、高い代償

潜水が得意なウですが、それ故に弱点もあります。まずは羽毛。水を弾かないので泳ぐ度にビショビショになります。泳いだ後は陸で乾かさないといけません。

ウはしょっちゅう陸上で翼を広げていますが、これも体を乾かすためです。のんびりと日光浴する姿も、それはそれでかわいいと思いますけどね。ちなみに黒い体は太陽の光を浴びて体を乾かすのに効率がいいとされています。

それから、木の枝にとまったり、枝を掴んで歩くことはできますが、スズメなどの陸の鳥に比べると苦手です。足の指が全て前を向いているうえにみずかきまであるので、木の上でオタオタすることも。器用なところも、逆に不器用なところも、どちらもウの魅力だと思います。

野生のカワウ(伊豆・三津シーパラダイス)

・・・ウの能力とは関係ない余談なのですが、『空飛ぶ漁師カワウとヒトとの上手な付き合い方: 被害の真相とその解決策を探る』という本に味が書かれています。カワウのお肉を焼いて食べてみたところ、とんでもなくマズかったそうです。

ウを見に行こう!!

カワウ・ウミウはそんなに珍しい鳥ではないので、川や海に行けば野生のウを見られます。ただ、野鳥はどうしても鳥との距離が遠いですよね。ウを間近で見たい!という方にオススメしたいのが、茨城県の日立市かみね動物園です。日立市といえば長良川の鵜飼で使うウミウの捕獲場がある場所ですね。市の鳥にもウミウが選ばれています。かみね動物園にはウミウと爬虫類の複合展示施設、その名も「はちゅウるい館」があります。水中にばらまかれた餌の魚を捕らえる姿は実にスマート。自在に泳ぎ回るウミウの姿をガラス越しに間近で見られる珍しい施設です。鳥好きの方にはぜひ見てほしい。

ウミウ(かみね動物園)

続いてはカワウの聖地、上野動物園です。上野にある不忍池は鵜の池、蓮池、ボート池という3つの池から構成され、このうち鵜の池は上野動物園の園内にあります。名前の通り野生のカワウがたくさん暮らしています。今でこそカワウはあちこちにいる普通種ですが、1970年代に国内のカワウは大きく数を減らしました。河川の水質汚濁や干潟の埋め立てが原因と考えられています。当時の数少ない繁殖地として、関東で唯一残っていたのが不忍池でした。その後カワウの個体数は回復し、今も上野にはたくさんのカワウが繁殖しています。

野生のカワウ(上野動物園 鵜の池)

野生のウに会える水族館として伊豆・三津シーパラダイス、通称みとシーを紹介しましょう。みとシーは静岡県沼津市に存在する水族館のひとつ。同じ沼津市にはあわしまマリンパークと沼津港深海水族館があります。1つの市に水族館が3つあるなんて、水族館好きにとっては贅沢な町ですね。がんばれば1日で3館を巡ることもできます。みとシーにはワイルドな展示エリアがあります。天然の入江を区切って、自然の海でゴマフアザラシ、カリフォルニアアシカ、キタオットセイを飼育しています。ここでは餌の魚を購入し、上から投げ入れて海獣たちに与えることができるのですが、この魚を「鵜の目鷹の目」で狙う鳥がいます。野生のウがやってきて、アシカたちが食べる前に魚をくわえて奪っていくのです。ウがアクロバティックに飛び、泳ぎ、何倍も大きなアシカとエサを巡って競走する姿をぜひご覧ください。

もっとも、野生動物に餌を与えることは、感染症リスクの増大といった予想外の問題を起こす懸念があります。なるべくウに奪われないようにした方がいいでしょう。

野生のウ(伊豆・三津シーパラダイス)

ウの基本情報が分かったところで、前編はここまで。水中を高速で自在に泳ぎ回るかっこよさ、翼を広げて日光浴するのんびりとした姿、器用かと思ったら不器用なところ。ウの魅力を紹介してきましたが実は他にもあるんです。それは・・・次回、ウ2でお話しましょう!いよいよけもフレとポケモンに登場するウのキャラクターたちを分析します。

参考文献

ナショナルジオグラフィック日本版 猛スピードで急降下するシロカツオドリ
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/photo/16/122200194/

CHUMS WHO IS BOOBY
https://www.chums.jp/aboutchums/who-is-booby

小宮輝之監、ポンプラボ著『せかいの国鳥 にっぽんの県鳥』カンゼン、2024
小宮輝之監、ポンプラボ著『鳥のなかま&分類・系統図鑑』カンゼン、2025
坪井潤一『空飛ぶ漁師カワウとヒトとの上手な付き合い方: 被害の真相とその解決策を探る』成山堂書店、2013
郡司芽久『キリンのひづめ、ヒトの指: 比べてわかる生き物の進化』NHK出版、2022
西海功他『特別展「鳥~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥の系統~」』2024

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この記事を書いた人

生物が好き。ポケモンと謎解きゲームも好き。