レジェンド飼育員・柴田さんにインタビュー!!-大森山動物園-

はじめに

今回は、秋田市大森山動物園で飼育員を務める柴田典弘さんにインタビューを行いました!

これまで数多くの動物を担当してきた柴田さんに、飼育員になったきっかけから、キリンのハズバンダリートレーニング、動物たちとの向き合い方、そしてこれからの動物園についてまで、たっぷりとお話を伺いました。
普段の動物園ではなかなか知ることのできない、飼育員ならではの考えや工夫が詰まったインタビューです。

今回もZooPortal取材班のみなさんが大活躍してくれました!ぜひ最後までご覧ください!

柴田さんと、今回初出動のZooPortal取材班員たち

柴田さんが飼育員になった経緯

実は飼育員を最初から志してなったタイプではなく、とにかく虫が好きで、ずっと飼育して、繁殖させてというのが子供時代の趣味でした。高校になって動物から一度離れましたが、地元の農業系短大に進学した際に畜産学部を選びました。

ですから深く考えていたわけではありませんが、結局のところ、生き物の道に進んで、動物園に就職しました。たまたま奇跡的に採用枠があったので受験し、採用されたというのが実際のところです。

飼育員の1日のスケジュールについて~毎日どんなことをしていますか?~

毎日違うのが飼育員の仕事ですね。私の理想とする飼育員は、日々ルーチン化しないことが一番だと思っています。

しかし基本的には、

  1. 動物を展示場に出します(放飼)
  2. 獣舎の掃除をします
  3. 当日と翌日の餌を準備します
  4. 昼
  5. 一般的には動物舎の補修や大きな砂の入れ替えなどの作業
  6. 動物の収容
  7. 展示場の清掃
  8. 日誌を入力して終了

というのが何もない、一般的な飼育員の1日です。

ZooPortal取材班–杏-

何かがあるというのは、どういうことですか?

いわゆるルーチンが崩れるのは、暑さの問題がないか、また吸血性のサシバエなどに苦しんでいないか、また急に寒くなると朝の温度が下がるので、その対応などが必要な時です。

一番心配している事柄がその日の1番最初に来るのが本来の姿と思っているので、私の場合ですと、朝起きたらキリンの監視カメラを見ます。もう出勤前から優先順位付けが始まっています。動物園に到着したらトナカイを全頭確認に行くというのが実は含まれていたりします。それが寝る時間近くにも発生するので、あまりよろしくないのですが、ワークライフバランスは乱れています。

起きている時はずっと動物のことを考えています。ただ、それが精神衛生上自分にとってはプラスになっていたりしています。人には一切求めたことがないですが、私は見ていないと安心して寝起きできないので、見ることを選んでいます。

今の担当動物や過去の動物について

今までたくさんの動物を担当しています。20歳で採用され、すぐにゾウ、ラクダの担当になりました。その後、大型ですとすぐキリン、シマウマも担当しました。その後は猛獣を担当し、すでに8割ぐらいの大森山の動物を担当しているかと思います。今はラマなどですね。

たくさん担当した中でもキリンとトナカイの飼育歴が少し長いです。これらの動物の飼育技術に関しては自信があり、自分の中では恥ずかしくないレベルに達していると思っています。

推し動物のオススメのポイント

一番気になっているといいますか好きなのは、やはりキリンです。トナカイも大好きですが、どうしても一番最初に気になるのはキリンでしょうかね。
ポイントというと、お客さまからすると雄雌の違いや顔の違いも分からないというのが一般的です。
「どこで見分けられているのですか?」と質問されると、「顔です」と答えます。
ただ、そう答えたときに、「え、わかりません」というリアクションをされるのが寂しいです。

柴田さん

こんなに違うのですが…

“ただのキリンさん”ではなく、キリンのリンリンさん、ケイタさんというふうに見てほしいというのが最大の望みですね。お名前まで覚えてほしいと思います。

やはり雄雌の判別も難しいところではあるのですが、少し人気がある動物ですとまた変わってきます。例えば、同じように見えるレッサーパンダでもお客様によっては見極める方がいます。トラの顔も同様です。その一方、キリンの顔で見極められる来園者というのはほぼいません。それをスター動物と同一にキリンを見てほしいです。トナカイにも同じことが言えますが…

見極められることがない動物たちに関心を示してほしいです!!ずっと思っています。

ZooPortal取材班–杏-

見極めのポイントや、よく見ているところはどこですか?

やはり顔ですね。顔の形やパーツの位置などです。どうにも上手く言えないのですけれども、日本人が外国人を見るようなレベルの感覚です。
ただ、これは同時に新しい可能性にもなりえると思っています。来園者の新しい楽しみ方として有用かと思います。見極められるようになってから動物園に行くと、新しい動物園との向き合い方ができる、見方が変わると思います。

飼育員として働いてみて、どういう人が向いていると思いますか

1つだけ間違いないことがあります。それは、分からないことを聞く姿勢です。さらにそれだけではなく、解決しなかったときです。AIに聞いても分からないことがほとんどです。AIの技術というのは、動物の世界ではかなり低いのが現状です。ですので、分からないときに小さな殻に閉じこもらず、他の施設や場所にどんどん出て行ったり、連絡をとることができるコミュニケーション能力がある人です。

ここで大事なのは、近くの人に聞いて「あ、そうなんですね!」ではなく、「もっと深く知ることができるはずです」という探求心、周りの先輩たちに教えられたことを鵜呑みにしないことも大切です。難しいのですけれども、そう思っている人が確実に結果を出せる世界だと思っています。向上心がある人のほうが伸びやすいですし、もし自分が飼育員になった時により結果を出せると思います。

教科書では学べない動物園

ZooPortal取材班–杏-

大学の授業などだけでは見にくい、現場ならではの判断や苦労、工夫などはありますか?

学校で教わらないことは、もうたくさんあります。
例えば、トナカイのペレットは本来は中型、大型草食動物用ペレットを給餌するべきなのですが、実際に今与えている餌は水鳥用のペレットです。大学で習うような畜産学ではもちろん牛の配合飼料などが挙げられています。畜産学はどちらかと言うと特定の餌で学ぶ世界だといえます。今水鳥用を与えているのは最善ではなく、現状やむを得ない選択なのですが、草食動物だから草食動物用ペレットという管理をしているとトナカイは歯がなくなります。

そこに気付いてしまった時に私は苦しみました。草食動物用の餌を与えられませんし、与えるべきではありません。そんなことはどこにも書いていません。その「どこにも書いていない」ということが苦しみでした。

しかし、誰に聞いてもわかりません。今こそ自分で考えないといけません。勇気をもって変えてしまうしかありません。ただその先に大きな責任と命にかかわることなので一定のレベルの経験は必要だと思います。

私は水鳥用の水に浮く柔らかいペレットにするか、もしくは与えない方がいいと判断しました。ペレットをやめるか、水鳥用の歯の摩耗を最低レベルに抑えられる餌に変えるか二択でした。

究極的に悩んだ結果行き着いたのが、必要だと言われているグラムはもう与えることはできません。なぜかと言うと本来の餌でないからです。ただトナカイが欲するので福祉的な意味で与えるべきだと考えて、水鳥用の餌を草食動物用ペレットの半量を与えるようにしています。

つまりペレットは餌としてはあまりカウントせずに、ただの嗜好品として与えるようにしました。不足した栄養はビタミン剤で補っています。

これは経験と、トナカイが早く死ぬという今までの結果から鑑みてこのような結論にたどり着きました。それに向き合って教科書や畜産学を超えたところで判断したことです。そういう判断や現状は学校でも動物園でも教わりません。教わらないのですけれど、何か対策を講じている人が必ずいます。園の中で教わらなくても、なぜ水鳥用のペレットを与えているのですかと聞き、それをずっと求めていくことが必要です。

キリンのトレーニングも私は教えられますが、学校も動物園も教えてくれません。それでは、知っている人に聞くことが一番の教科書というわけです。学校で一生懸命学ぶことはもちろん構いませんが、私はそれすらも完全に鵜呑みにしてほしくはないと感じてしまいます。学んで思考が一定の方向に向いたうえで仕事をするとそれ以外の選択肢が出てこなくなってしまうわけです。
それは与えるべきではないと気づくまで、やはり10年ぐらいかかりました。自分で考えるようになって、やっと固まった思考を脱しました。

そういう現状もあるので、今は思考が固まってしまう前に、学生段階で話をする機会を与えてほしいと思っています。

キリンのハズバンダリートレーニングをどのように開発したのですか

ZooPortal取材班–杏-

言葉の通じないキリンを相手にどのように物事を教えたのですか?

考え方は海棲哺乳類と一緒です。確かに海棲哺乳類は賢い種が多いです。ただ、1つだけ共通点があり、押さえつけられない・怒って止められないということです。つまり、言うことを“聞いてもらうしかありません”。

そういう意味ではキリンも一緒で、「ここにいてください、針を刺しますよ、でもそこにいてください」を聞いてもらうしかありません。仮に怒っても絶対理解しないでしょう。怒ったとしても相手の言い分は「嫌です」ということですから。

ですので、一番重要なのは無になることです。1mmも私のメンタルは揺れません。キリンがわずかに足をピクッとするまで、延々と作業を続けます。イライラしません。そういう決心をしてから始めます。

分からないことはイルカのトレーナーに聞く・完成形をYouTubeで見るようにしました。声を発して教えても分からない動物なので、その行動を引き出すためには、忍耐が必要になります。仏教の考え方やお釈迦様の心に近いかもしれません。私はよく人に言うのですが、自分のメンタルを安定させて、1mmもイライラしません。結構難しいことです。さらには師匠という人を見つけて聞きます。その3点セットで、できない動物は多分なくなるのではないかと思っています。

欧米と日本の飼育のスタイルはかなり違います。欧米は人の安全が最優先です。ガードもない場所で膝に足を上げさせたりしませんし、キリンも首を下ろした状態で採血はしません。保定枠に収まった状態でトレーニングされていることが多いです。ただ同じことをキリンが拘束されていないフリーな空間でやらないといけないというところで、面白さと葛藤はたくさんありました。日本にキリン用保定枠があるところはほとんどありません。日本に合わせた手法でないと受け入れてもらえず普及しません。

開発はもう手取り足取り、一言で言うとまさに手探りの日々でした。

「何かこうなったのですが」「何か足を上げたのですが」といったことの連続でした。一言で言うと、早かったです。びっくりするぐらい早かったです。それが自分のモチベーションになりました。日々成長して、挫折しそうだったという時間がなかったことも成功の一助かもしれません。

ZooPortal取材班–杏-

最初にまずどんなトレーニングから行ったのですか?

最初はまず直接餌を与えるということもできなかったので、人に慣らすことから始めました。長めの木を手で持って与え、次に短めの木、もっと短い木です。もっと短い木を食べさせている時に、人参スティックなどでようやく手渡しになりました。そのあと、何が好きなのかを調べるために、スーパーの野菜を全部買ってくるぐらいの勢いで与えました。最終的にはリンゴになりました。
今度はそのリンゴを使いながら触ることに慣らしました。しかし触ろうとすると逃げます。逃げないようにするためには、触ろうとするのを我慢しました。
“逃げる→前に出す”というのはトレーニングになりません。
どこまでだったら逃げないのかを探りながら少しずつ近付いていきました。

柴田さん

あれ?昨日まではこれで逃げていたのに、今日は逃げません…

この積み重ねでした。それでは明日はこれでも逃げません。その次の日に初めて触れたという感じで、日々成長していきました。

誰でも、少しずつやれば絶対にできますし、できない動物種は多分ありません。
しかし、やらないほうがいい動物というのもいます。例えば、トナカイです。トナカイはそういう長い馴化をするのではなく、なでたほうが早いです。何でもかんでもオペラント条件付けで訓練するのではなく、慣らしたほうが早い動物は慣らしたほうがよく、動物種や個体によって適する方法に変えた方がいいのです。
保定柵に入れて固定したほうが早い動物は固定したほうがいいですし、どうしようもない動物は無の境地でやらないといけません。ですからここをメリハリをつけないと、上司からやめるようにと言われます。

そのほうが早いですし効率もいいのに何をやっているのですか!

別の理由でラマもやらないほうがいいです。私はラマに押さえつけない状態での首の差し出しや、自発的リードで引っ張らない状態でのお散歩、触らないでお座りまで出来るようにしました。ただ、ラマでトレーニングをやるべきではないと言った理由は、担当期間の問題です。トレーニングから離れた瞬間に0に戻りました。つまり、10年20年間メンテナンスが必要になってしまい、それは組織はなかなか受け入れません。ラマ一頭にその手間を求めていないからです。

若い人に特に言いたいことなのですが、すごい意欲で来る人がいます。「自分の担当動物、私もホイッスルを買ったのでやってみます!」

柴田さん

少し落ち着いてほしいです…

そこに手間をかけていることを、どう思うかが問題です。こういうトレーニングが必要だという動物の担当になった時に、その技術を使えばいいのです。やることはいいかもしれませんが、できたとしても、次に担当になった人にはできないという状態が発生します。やった本人がいつか“自己満足でした”と気づくでしょう。個体の幸せにつながらなかったわけです。

ラマのような野生化タイプと、キリンやウマの長期記憶(1回覚えたことを忘れない)タイプの動物と、2極化します。それを見極めたうえで、トレーニングするべきかしないべきかを見極めるべきであるというのが最近の私の結論です。

全ての種類でトレーニングが可能であるという絶対の自信はあります。ニワトリから何でも一定のレベルまでトレーニングすることは可能なのですけれど、ものすごく手間をかけてわずかな成果というのは認められにくいです。探究心としてやるのはいいのですけれど、それが継続的に彼の幸せに繋がらないと思った瞬間に、やらなくてよかったと思うのが辛いですね。

やること自体は自分の技術に繋がるので、ラマを仕上げることはいいと思います。ですが、野生化することを考えたら1頭やったらもう2頭目はやらなくていいと思います。とにかく当時は私もトレーニングで成果を上げていた時期だったので、何でもできることを証明したいという技術的欲求があったと思います。これはどの動物でも通用するものであってキリンだけの結果ではないというのを証明するための一環で、このラマは正の強化を用いて英才教育を受けたわけですが、野生化した瞬間に吹っ飛んでしまいました。どの動物でもトレーニングを盛んに行うべきではないという点に、注意が必要です。

トレーニングの様子

他の園館でハズバンダリー・トレーニングのような同様な取り組みをするには何が一番必要だと感じますか?

やはり最短の期間で結果を出すことです。1人でもできます。まず1人でできるトレーニングを短い期間で結果を出します。

ただ、その人が1人でその個体を死ぬまで面倒を見ることはなかなかありません。つまり担当が変わるのであれば、誰かに伝えないといけません。その時は担当者ではなくても、第三者の仲間が必要となります。当園でもトナカイを放牧する際は担当者ではない仲間が5、6人います。その仲間を作るためには人間関係や、普段の協調性が非常に重要になります。

チームができると、その後に組織が付いてきます。この取り組みには人が欠かせません。
負担は増えます。それでもやった方がいいと思ってもらえるまで一生懸命自分のスキルと仲間たちで続けていきます。短期間でないと認められない世界で、成果を出すためには能力がある人に対して「教えてください」という姿勢でいないと難しいかもしれません。

動物と関わる上で気をつけていること

ZooPortal取材班–杏-

ただのふれあいにならないように気を付けていることは何ですか?

当園のキリンもそうですが、飼育員が好きで近くに来ることはほとんどありません。これは、ただのふれあいをしていないからです。餌を直接与えるときは必ずトレーニングなどの交換条件が発生しますので、私が園路を歩いていてもキリンは来ません。

これは非常に珍しいことですが、これが飼育において一番大切なところだと思っています。あの人は餌をくれる人だと認識させないようにしています。園路で突然ゲリラ的にリンゴを食べさせたりすることはありません。トレーニングでその個体と向き合う時だけ手で与えます。

こんなに人に近くて、慣れて大丈夫ですか

というように、ものすごく慣れたキリンのように言われることもあります。ただ、実際は餌を持っているから来ただけで、私を好きでいるわけではないというこの関係を作るのが「動物を管理する」という意味ではものすごく重要です。「何かください」と近づいてくるときは、体を触られるなど何かをされる覚悟をして来ているキリンと、そうではない動物では危険性が全然変わります。

蹴られかねないような場所に私がいても蹴らない理由は、蹴る必要がないからです。この人を蹴っても何の意味もありませんし、蹴る対象でもありません。イライラもしていません。ただ、「win-win」の関係を築かずに近づくと、「何もくれないのですか?なぜ足なのですか?」という理由で蹴る可能性があります。関わり方で一番気をつけなければならないところは、「根拠なき接近・接触」です。

個体をなでるのはいいのですが、きちんと根拠をつけることが必要です。ラクダやトナカイなどでも体を触った後に必ずご褒美が出てきます。すると何かされた後にはご褒美があるので、最初の接近は安全になります。ただよしよしして、しれっと離れたりすると危険です。

飼育員として働く上で大切にしていること

1ミリも染まらないことです。真っ白か、真っ黒です。真っ白な心ですべてを受け入れる気持ちもありますし、真っ黒で何色も受け付けないこともあります。

悪い影響は受けず、プラスを常に探しているのがやはり白に近いかもしれません。

もし新しい動物を任せられたときに、その種に「この病気で死ぬことが多いです」「こういう怪我が多いです」など問題がある種だったら、年齢関係なく詳しそうな人に徹底的に聞きます。ネットで出てきた情報や論文などを読んで、その人から全部吸収して、咀嚼して、さらに上に行く、そういう気持ちがあるのでとにかく頭の中は真っ白にしています。もし自分に固執しすぎて何の根拠もなく拒否するようになったらもう引退するときだと思っています。

そうなってしまった時には、もう動物の命を守ることはできても新しい成果は生み出せなくなってしまうと思っています。ですからずっと望んでいることは、すごい人が現れることです。すごい人に「教えてください」とまた言いたいですし、そういう気持ちになりたいと望んでいます。

飼育員や園のスタッフが来園者に一番してほしいこと

ZooPortal取材班–杏-

SNSでの拡散ですか?寄付ですか?

私は、飼育員が一番常日頃から思っていることは、かわいい発信をしてくださる方はたくさんいらっしゃいます。かわいい発信をしてくださる来園者の方に、こんな取り組みをしていたという発信も加えてほしいということです。

園の考えや方針がたくさん知れ渡る時代で、動物園に来なくても「かわいい」とされている動物の写真は出ています。そこにたくさんの興味関心が集まります。あれは動物園にとって全部プラスに働きます。
しかし、ハズバンダリートレーニングの投稿などはほとんど見られません。私以外の担当者も実際に行っていますが、それでもあまり発信されません。これが動物園に何を求めているかの答えだと思います。

「そこではありません・悔しいです」と思うこともありますが、これは我々の発信不足によるものだと思っています。そこを見てもらえる努力をしないといけません。だからこそ逆の考え方で、「何を来園者に求めていますか?」と問われると「素晴らしい取り組みも発信してほしいです」と繋がります。ぜひよろしくお願いいたします。

飼育員を志望する学生が今、学生時代に一番やっておくべきこと

2,30年前の学生とは違い、今は多くの取り組みやトレーニングしている様子も含めて、たくさん情報を得た状態で入ってくる学生が多いです。
 ですからこちらは「ある程度知っているでしょう」という前提で話しますが、一番やっていてほしいことはいわゆる業界の私のような人間がどこかで話をする機会があるとき、そこを逃さないでほしいです。

そこに一般の学生も参加できる機会があります。講演会やオンラインで何かやるのもそうですし。そこが最大のチャンスなので、そこを逃さないでほしいです。
私自身も若い時はすごく羨ましかったですが、そのチャンスが多い首都圏の学生はやはり有利だと思います。やはりすごい学生は一定数いて、学生なのに友達になる勢いでいろいろなところで会う子もいます。「もうこの人たちの戦いは始まっていますね」と思いますね。
なかなか同じ会議に出るということは少ないので、そのチャンスがあるときに出てきて、今の学生は8割5分は名刺を持っているので交換したりします。あのような行動力がある子を求める傾向がこの世界にあります。

その上で、自分が思っている理想のようなものがあると思います。現場のリアルの人に直接話を聴いたり、直接ではなくても声を聴くことで、自分の理想がやっと固まると思います。

「こちらに進みたかったです」「正しかったです」「少し考え直しましょうか」というのも、現場の人の声を聴いた経験で変わっていくので、将来こんなはずではなかったと思わないためにも、その貴重な学生生活でさらに貴重なプロの飼育員の方や獣医師の話が聞ける機会は、頑張って参加してほしいと思っています。

飼育員を目指す学生にメッセージ

飼育員を目指す学生というのは、私たちにとっては一番ありがたい人たちで、さらに言うとその人たちの前で話をしたいと思っている技術者もたくさんいます。

私が一番好きな仕事の1つが専門学校の講義で、すごくテンションが上がります。そのぐらい本当はみなさんの前で話をしたいと思っていて、現場の人にとって動物園を目指す人たちは大切な存在です。

だからこそ、ものすごく狭い世界で倫理的な理想で頭を固めないでほしいです。私のように「この人はすごいですね」と思った時に、自分の頭がひっくり返るような出会いがあり、またアップデートされていくので「僕はこう思います」「僕は動物福祉は」などというふうに「僕は」で固まらないでほしいです。

ですからその現場の人の話を聴いてほしいというところにも繋がりますし、狭い自分の動物園、自分の志す動物園にものすごく通っていますということではなく、ただ、その努力をしながらも、頭が固まらないようにするべきだと思っています。まだ何も固まる年齢ではないので、強い思いは大切ですが、それに囚われて苦しまないでほしいです。
将来頭の中は変わるので、こんな世界だと思いませんでしたと言って苦しまないように、たくさんのことを吸収する少し白い脳で居続けてほしいです。

この動物園10年後どうなってほしいですか?

ZooPortal取材班–杏-

理想論ではなく現場の人はどんな未来を本気で願っていますか?

やはり動物種を限定することが必要です。自分が幸せにできる動物だけを、広々とした今よりもずっと理想的な環境で飼育したいと思っています。

しかし、まだスター動物の力も必要でしょう。ということは幸せにできる技術がある“推しの動物”だけは幸せにしていきます。そこに、とりあえずスター動物の力も借りて集客をして運営していかなければならないと思います。ですが今入らなかったような動物は縮小していくべきかもしれません。

それに伴って人も縮小していくかもしれませんが、それはもう仕方ないと思います。10年でもそこまでできれば相当早いのですけれど、もし私ならまずそれをやります。ただ辛いですね…

どんな動物園も必ず経営していかないと生き残れません。どの動物園もやめずに、それぞれが全部生き残るとしたら、「特に守れない、幸せにできない動物」を減らしていくことが必要不可欠になるかと思います。

最後に柴田さんから伝えたいこと

柴田さん

たくさんありますが…

私は組織人なので、このような取材があると様々なことを発信できます。しかし、普段あまり強い主張や、細かい技術論は発信できません。これはものすごく辛いことです。本も書きたいですし、動画配信もしたいです…結果を示したいというのは、技術者の本来の欲求と思います。
これを叶えてくれるのは、こういう取材と来園者の皆様です。来園者が代わりに発信してくれて、「救われました」と感じたことが過去何回もありました。みなさんの応援があれば実現可能なことです。

また、この動物園は地理的に不利な動物園だと思います。都会の動物園では近くを訪れたついでに寄ることもできますし、周りの動物園へもハシゴしたりできます。その反面、大森山は「大森山(秋田)に行く」という思いがあったうえで来ていただいています。そういう方々はものすごく貴重なのです。せっかく来てくれた来園者を逃したくないので、そういう方にはぜひかわいい以外の何かを見つけて、大森山動物園のために発信して力を貸して欲しいとずっと思っています。自分はその発信しているようで実はできていないのです。でも、お客さまは見たことを自由に発信できます。だから私は来園者をものすごく大切にして、他の地域から来ていそうな大きいカメラを持っている人などには話しかけるようにしています。

地理的になかなか気軽に来られる位置にはないのですが、だからこそお客さんと何十分も立ち話をすることもあります。それは必要な努力だと思っています。だから私の代わりの声となって、発信するその力添えを頂きたいとずっと思っています。お願いいたします。

まとめ

普段は見られないバックヤードにもお邪魔させていただき、また、より深掘りした内容のお話を伺うことができ、有意義な時間となりました。特にフィーダーについてのお話では、飼育員の方ならではの新たな視点や意見を知ることができ、非常に勉強になりました。今回学んだことは、今後の私自身の活動にも大きく影響を与えてくれると感じました。(インタビュアー:杏)

キリンのハズバンダリートレーニングの取材を通して、トレーニング以外での動物との接し方やちょっとした工夫の重要さを感じました。
また前例だけに則った飼育だけでなく、状況に応じて新しく挑戦し、科学的にデータを積み上げることが今後大きく求められることだと思いました。(撮影担当:フンボルト)

柴田さんのお話や、キリンのハズバンダリートレーニングを実際に見学して、動物を飼育するうえでは、前例にとらわれることなく、新しいことに挑戦する姿勢と、状況に応じて考え方や対応を変える柔軟性が必要な技能なのだと感じました。(撮影担当:タンタンメン)

今回は非常に貴重なお話、本当にありがとうございました。通常の飼育を飛び越えて、常に動物たちの幸せを願うことがどれだけの努力を必要とするのか…実際現場の方々にお話を聞かないとわからないことと思います。その取り組みがより多くの人に広まり、もっと日本中に広まると嬉しいです。
今回は柴田さんをはじめ、大森山動物園の皆様には本当にお世話になりました。ありがとうございました!!これからもどうぞよろしくお願いいたします。(班長・編集担当:Ryusei)

シェアお願いします!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Ryusei -動物ガチ勢-のアバター Ryusei -動物ガチ勢- 現役獣医学部生

動物ガチの大学生です! 動物園と一緒に動物福祉の研究しました!2023年埼玉県私学文化祭最優秀賞、2024年日本動物学会高校生ポスター賞受賞、2024年3月千葉市動物公園にて講演会を実施
推し動物はゾウ、ヒョウなど…!