動物園ニュース【2026年11月】〔上〕

こんにちは!生きものの語り部です。

このコーナーでは、日本各地の動物園が取り組む活動や、近日実施されるイベントを紹介する『動物園ニュース』を、月2回のペースで配信しています。

ぜひZoology Loreの過去記事や、前回の動物園ニュースもご覧いただければ幸いです。

京都市動物園「アジアゾウに対するエンリッチメントの取り組み」がエンリッチメント大賞を受賞

京都市動物園によるアジアゾウのエンリッチメントの取り組みが、2026年のエンリッチメント大賞を受賞しました。

エンリッチメント大賞は、NPO法人市民ZOOネットワークが2002年から実施している表彰制度です。動物園や水族館で行われている環境エンリッチメントの優れた実践を評価し、動物福祉の向上を後押しすることを目的としています。2026年は第25回の節目にあたります。

環境エンリッチメントとは、飼育動物がその種本来の行動を発揮できるように、採食方法や生活空間、社会的な環境などに工夫を加えることです。取組としては、遊具を設置したり、餌を隠したりするだけではありません。動物の行動を観察し、課題を把握したうえで改善を試み、その結果を評価して次の取り組みにつなげていく過程が大切になります。

京都市動物園は、2020年に独自の「動物福祉に関する指針」を作成し、飼育員、研究員、獣医師が連携して動物福祉の向上に取り組んできました。動物園全体の動物福祉向上のための体制整備が評価され、その取り組みについて2021年にもエンリッチメント大賞を受賞しています。今回のアジアゾウに関する取り組みも、こうした継続的な活動のなかに位置づけられるものです。

動物園のエンリッチメントは、実施した内容の珍しさや設備の規模だけで評価できるものではありません。動物がどのような行動を示し、生活の質がどう変化したのか。そうした観察と評価を積み重ねることが、動物福祉を実質的に高めていくことにつながります。

今回の総評から一部を抜粋させていただきます。

今年度は、2022年以来4年ぶりに大賞を出すことができました。この4年間大賞が「該当なし」だった理由として、エンリッチメントの実施自体は現場に広く浸透したものの、審査対象となった取り組みでも、効果の記録、評価、見直しと改善、という科学的根拠につながるプロセスが不十分だったことが挙げられます。

裏を返せば、今回の取組は「効果の記録、評価、見直しと改善、という科学的根拠につながるプロセスができていた」ということになります。今後も京都市動物園のアジアゾウ飼育がエンリッチメントの質を高め続け、日本のゾウ飼育によい影響を与えることを期待してやみません。

今年も鳥インフルエンザ対策が必要な季節がやってきました

今年も鳥インフルエンザ対策が必要な時期がやってきました。

秋から冬にかけて、動物園にとって重要な課題となるのが高病原性鳥インフルエンザへの対応です。渡り鳥の飛来が始まる時期には、野鳥を介したウイルスの侵入に警戒しなければなりません。園内で飼育する鳥類を守るため、各施設では感染リスクを減らすための防疫体制が求められます。

環境省は10月21日、韓国で高病原性鳥インフルエンザ(H5亜型)が確認されたことを受け、野鳥サーベイランスの全国の対応レベルを「対応レベル2」に引き上げました。渡り鳥の移動が本格化する時期を迎え、国内でも警戒を強める必要があることを示しています。

環境省によると、10月28日には宮城県栗原市で回収されたマガンの死亡個体から、簡易検査でA型鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が確認されました。ただし、この段階では高病原性かどうかは確定しておらず、その後の遺伝子検査が必要とされています。ついで10月31日には、宮崎市フェニックス自然動物園が「鳥インフルエンザ防疫対策について」を公表しました。

動物園の鳥インフルエンザ対策は、飼育鳥と野鳥との接触を防ぐ施設管理、来園者や車両の消毒、園内での死亡野鳥の監視など、日常的な対策の積み重ねが重要になります。同時に、展示を中止する場合には、来園者への影響だけでなく、飼育動物の生活環境にも配慮する必要があります。

鳥インフルエンザ対策は、感染症から動物を守るための衛生管理であると同時に、動物園が担う動物福祉の一環でもあるのです。

コモドオオトカゲの公開始まる iZoo

静岡県河津町の体感型動物園iZoo(イズー)で、10月31日、コモドオオトカゲ2頭の一般公開が始まりました。

来園したのは、いずれも12歳のオス「アリル」とメス「アイチャン」。アリルは体長約2.8メートル、体重約86キログラム、アイチャンは体長約2.4メートル、体重約49キログラムです。2頭は10月28日に羽田空港に到着し、31日から来園者への公開が始まりました。

コモドオオトカゲはインドネシアのコモド島など、限られた島々に生息する大型のトカゲです。生息地の減少などから絶滅が懸念されており、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは絶滅危惧種に分類されています。

さて、今回の受け入れは将来的な繁殖を目指す、インドネシアとの国際共同保全プロジェクトです。注目したいのは、インドネシアから繁殖を目的としてペアが貸与されたことです。2026年3月には静岡県とインドネシア共和国の間で希少野生動物の保全に関する協力覚書が締結され、4月にはインドネシアのスラバヤ動物園とiZooとの間でも動物交換・繁殖協力に関する覚書が結ばれました。

iZooは2015年から導入に向けた交渉を続けてきたといいます。今回の来園は、10年以上にわたる取り組みが実を結んだものです。

コモドオオトカゲは、飼育下での繁殖にも難しさがあります。今回の2頭は当面、別々のエリアで飼育され、繁殖期を迎える2027年春頃に同じエリアで飼育する計画です。テレビ静岡の報道では、2027年9月頃の産卵を目指す方針も紹介されています。

動物園ニュースでは繰り返しお伝えしてきましたが、動物園で希少種を飼育する意義は、珍しい動物を来園者に見せることだけではありません。飼育下での繁殖技術を確立し、野生動物の保全に貢献することも重要な役割です。今回のコモドオオトカゲの来日が、日本の動物園が国際的な保全活動に参加する新たな機会となることを祈ります。

まとめ

今回の記事では、2026年11月前半の動物園に関するニュースをお届けしました。
今後も、日本各地の動物園や水族館のイベントや出来事を、ニュースとして紹介していきます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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この記事を書いた人

2025年から、当ブログを運営。動物園専門のメディアを目指しています。