カザフスタンで進むトラの再導入
カザフスタンでは、70年前に絶滅したトラを、かつて生息していた地域へ再導入しようとしています。カザフスタンがトラの再導入の希望を表明したのは2010年ですが、その8年後には国連開発計画の支援を受けて、イル・バルハシ国立自然保護区がトラの将来の生息地として設立されています。この生息地は、数千haに及ぶバルハシ湖畔に広がる森林や氾濫原で、最大100頭程度が生息できると推定されています。

この再導入プログラムに基づいて、2024年9月23日には、オランダからアムールトラ2頭(雄1頭と雌1頭)が同国に持ち込まれていて、今年はロシアから3~4頭のトラが持ち込まれる予定です。現在飼育しているトラたちは、保護区近くの狭い区域で順応訓練を受けており、その後、広い区域へ移動する予定が組まれています。域外と域内の保全活動が機能していないと成立しないことなので、関心を持っている事業です。
トラやライオンの大きさの表記について
いまだに、トラやライオンの大きさについて、全長を体長と記載している書籍があります。また、全長を計測する時に、背線に沿って長さを測る方法と、鼻先から尾の先端までの幅の長さを測る方法で得た数値が混同されていて、書籍によって記載内容に違いがあります。
例えば、アムールトラでは全長3.5mと3.3mの記載数値がありますが、これは計測方法の違いから生じているだけで、同じ個体とも言われています。これでは、ややこしいと思います。動物園では生体を飼育していますが、それゆえに動物園職員は一番違和感に気付けるはずです。園内での看板表記やガイドでの情報発信においては、正確な内容を伝えてほしいと思います。

ロシアにおける子どものトラの捕獲方法
最近は行われているのか分かりませんが、ロシアでは冬季に、雪上で木製の刺股を用いて、複数のハンターが子どものトラを生け捕る狩猟方法があります。まず森で、雪上に残る足跡から、複数の子どものいる親子のトラを追跡します。所在を確認したら、複数の犬を放ち、同時に銃を発砲して親子を撹乱し、子どものうちの1頭に標的を絞って追跡します。
犬に追い詰められて逃げ出せない子どものトラに、複数人のハンターが刺股を用いて頭部や足を押さえ込み、紐を用いて縛り、生け捕ります。一見、手荒い方法だと思いますが、冬季の厳しい時に1頭のみ子どもを捕獲することで、母親の負担を減らして、他の子どもの生存率も上がるという考え方があるようです。
狩猟とくくってしまうとネガティブな印象で見てしまいがちですが、このハンターたちは国の仕事として請け負っており、またトラの行動や生態を理解していないと行えない技術です。現在、トラの生息数も回復していることから、野生動物との関わり方の一つとして知っておいてもよい事例だと思います。

ブータンの標高4000mに生息するベンガルトラ
2010年ごろだったと思いますが、英国のBBCのクルーが、ブータンで標高4000mに生息するベンガルトラを撮影したことがありました。この標高ならば、本来は岩場のような地形を思い起こしますが、ブータンではトラが身を隠せる植生が高地にも展開されていることが、進出を可能とした要因だったようです。
この事実は、トラの適応力の高さもありますが、ブータンの自然保護政策が成功していることの象徴とも言えます。
野生の足跡から体格を推定
以前ですが海外のトラの専門サイトで地面に残された幅14cm、長さ19cmの野生のベンガルトラの足跡を石膏で固めた物が紹介されていました。
トラの前足の掌球の横幅のサイズが、雌雄や体格の判断の目安となり、成獣ならば雄で10cm以上、雌は10cm以下と言われています。また、掌球の幅が1cm違うと、頭胴長は10~15cm違うそうです。
以前計測された雄で掌球の幅が11cmで頭胴長が185cm程度の事例がありましたが、石膏で固められた足跡の持ち主は、この事例を参考にすれば頭胴長は220cmになるかもしれません。
国内の動物園では見られない立派な体格の個体だと思います。
また肉球は形には愛らしさがあります。
国内の動物園で飼育されているトラを含めたネコ科動物の足跡のサイズや特徴も紹介してくれたならば、私としては嬉しい限りです。


